戦後70年の「日本の料理研究家の歴史」を完全解説した日本初の本
こんにちは、フードライターの浅野陽子です。
今日は書評です。
『小林カツ代と栗原はるみ〜料理研究家とその時代』(阿古真理・著)を読みました。
著者は1968年生まれ、作家・生活史研究家の阿古真理(あこ・まり)さん。
この本の発売は2015年。
終戦(1945年)から70年めの年です。
タイトルに入っているのは、小林カツ代さんと栗原はるみさんという2人だけだけれど、本自体は「戦後70年の日本の家庭料理の歴史を、各時代に登場したスター料理研究家からひもとく」という内容です。
明治生まれの江上トミさんや飯田深雪さんから昭和・平成の小林カツ代さん、栗原はるみさん、有元葉子さん、ケンタロウさん、栗原心平さん、コウケンテツさん、山本ゆりさんまで、新旧たくさんの料理研究家が登場します。
レシピの特徴や、なぜそれぞれのレシピ本がヒットしたのか、どう時代にマッチしたのかを膨大な資料と、女性の社会進出や家電の進化といった歴史的背景とともに、ていねいに解説されています。
食のメディア関係者や栄養士さんには興味深い内容
フードライターになってから、「人気レストランの取材」のほか、シェフや料理研究家にレシピを聞いて、普通の読者が作りやすいようにリライトする「レシピ取材」も多くやってきました。
また自分で料理を作るときにも昔からレシピ本は欠かせないので、私にとっては大変面白い内容でした。
フードライターや食の編集者、料理研究家になりたい人や栄養士さんなど、食の仕事をする人はみなさん、興味深く読めるのではと思います。
「レシピは面倒くさいから見ながら作ったことがない」
「分量はいつもテキトーか目分量」
という人も多いかもしれませんが、料理がうまいプロのレシピって、本当にすごいんですよー。
塩分や糖分の濃度、食感などがトータルで計算しつくされています。
初心者が火力の弱い家のキッチンで、プロと同じ手順通りにしても、完全に同じ味にはなりません。
が、かなりのレベルで「自分がこれまで食べてきたのとは全然違う味」が突然作れたりします。
それが料理の面白さです。
「一億総料理研究家時代」と今後の家庭料理の行く末
そしてこの本を読みながら、家庭料理ってこれからどうなるのだろう……と考えました。
ネットでレシピを調べるのが当たり前の今。
動画で解説する料理YouTuberさんやインスタグラマーさんたちの活躍もすごいし、紙のレシピ本で、しかもこうした昔から活躍されている料理研究家の本は、もう若い世代には登場機会が少ないかもしれません。
すると、文章化された「レシピ」って必要ないんですよね。
冷蔵庫にある食材をそのまま検索して、出てきた作りたい料理をその手順通りに再現すればよいので、レシピとして残しておく必要がない。
また日々ホットクックや、高機能電子レンジを愛用している身としては、このツールがもっと精度が上がると、人間の手や頭なんて使わなくても、勝手においしい料理ができる時代が早々に来そうです。
うちの小1の娘は夕飯作りを手伝うのが大好きですが、「あなたが大人になる頃は、もしかしたら『料理を作れる人』自体がめずらしくなるかもしれないね。『そういえば昔、ママがこうやって料理を作ってたなー』って思い出してね」と言っています(笑)
阿古真理さんの他の料理の本も興味深い
ちなみに阿古真理さんはこの本以外にも食に関する本をいろいろ出されていて、どれも興味深いものばかり。
また読んで、今後もここでシェアするかもしれません。
よかったら手に取ってみてください。
それでは、今日も最高においしい1日を!
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