食限定の取材歴25年、フードライターの浅野陽子です。
今日はいつもと違って追悼文です。先日ニュースで知った、料理研究家・枝元なほみさんの訃報について。
直接お仕事をしたことはないのですが、平成のスター料理研究家のお一人なので、もちろん存じてます。間質性肺炎で亡くなられ、まだ60代だったと。
突然の訃報にいろいろ思うところがあって、まとめます。
平成のスター料理研究家の一人
枝元さんは平成のスター料理研究家。
「料理の鉄人」のシェフがよく取り上げられますが、平成時代、わたしたち食のメディア業界ではシェフやお菓子職人と、また料理研究家ともお仕事をしていました。枝元さんもその一人。
わたしが原稿を書いていた料理雑誌の編集部では「どうする?次の特集はエダモンにお願いする?」という声がよく上がっていましたね。
単なる「ちょっと普通より上手い人」が作る料理とは、一段違う味に仕上げる。材料の使い方が斬新、盛り付けも美しい。その味を誰でも、何度でも再現できるレシピに起こせる。それが料理研究家です。
平成のスター料理研究家はそれぞれ、得意なジャンルがあります。おっかさん系しみじみおかずの小林カツ代さん、野菜を使ったスタイリッシュな料理の有元葉子さんなど。
枝元さんはアジア系のレシピ、特にポップで楽しいテイストの料理が得意でした。ポップだけどもちろん、作って食べると味がびしっと決まっている。
料理に捧げた人生と、誰かのキッチンにふわっと残りづつけること
90年〜2000年代のわたしがこの仕事を始めてまもない頃、枝元さんは雑誌やテレビにもたくさん出演していました。
いつもすごく楽しそうで。心から料理が好き、という雰囲気を出していらっしゃいました。
料理研究家は食べるものについて毎日毎日考えているからか、高齢でも元気な方が多いのです。
栗原はるみさんは78歳、有元葉子さんは83歳。辰巳芳子さんは98歳!今も現役でテレビに出たり、何冊もレシピ新刊を出したりしていらっしゃる。
故・小林カツ代さんだって亡くなったのは78歳だったし、昭和初期には103歳まで長生きされた飯田深雪さんというレジェンドもいる。
そんな中、枝元さんが69歳で亡くなるのはご本人も無念だったろうなと。
ただ人生の真ん中にずっと大好きな食があって、幸せだったんじゃないかと。
枝元さんが考えたレシピは残り、次の世代が作る。誰かのキッチンでふわっと存在し、食を通じた幸せを世に伝え続ける。
わたしもそんなふうにありたい。わたしの軸は「食と文章」になるけど、これからもこの業界で仕事をしていきたいと、枝元さんの訃報を聞いて思いました。
ご冥福をお祈りします。
それでは、今日も最高においしい1日を!
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