食限定の取材歴20年、フードライターの浅野陽子です。
長い取材歴でも、なかなか食べる機会がない高級食材、ふぐ。
そのふぐ、しかも希少な天然のとらふぐを浴びるように?堪能してきました!
贅沢すぎるレポートをお届けします。
大阪発の会員制高級ふぐ専門店が今月11月、一般向け店舗を人形町に初出店
日本の食は深い……普通の人よりは知っているつもりでいましたが(^^; この日は普段ほとんど触れることがない、食の世界をたっぷり体験しました。
今月初め、11月29日にオープンしたばかりの新店「大阪とらふぐの会“人形町 喜見(きみ)”」へ。
入り口はひっそりして見落としてしまいそうに。が!
店内に一歩入るときらんきらんで豪華。料理長の小髙見(おだか・みる)さんが迎えてくださいました。
並ぶ食器もゴージャスぅ!華やかなだけでなく、触れた質感からとても上質な年代ものだとわかります(この後に出る器の数々もすごかった……)
客席の横には巨大なふぐが元気に泳ぐいけすが。
そしていろいろ謎めいていますが、大阪・天王寺の本店ほか、都内含めて国内に5店あるなかでこの「人形町 喜見(きみ)」以外は、すべて紹介による会員制で営業する高級ふぐ専門店です。
今回初めて、会員でなくても誰でも予約可能な店として11月にオープンしたのが同店です。
店名の「喜見」は、料理長の下の名前「見(みる)」さんから1文字取ったそう。
料理長の小髙さんによれば、ふぐは日本全国1年中とれる魚で、食べられるのは22種類。
その最高品種が天然のとらふぐで、さらに同店では「成川(なりかわ)評価」という、豊洲のふぐ専門の仲卸店の目利きで「5-Sランク」(=天然とらふぐでサイズは3〜8キロの最重量級、「泳ぎ」の状態で元気、見た目もきれい)以上をつけたものだけを提供するとのこと。
目の前でふぐをさばく臨場感MAXな「ふぐ尽くし」コース20品!
そしていよいよふぐ尽くし20品のコースがスタート!
ですが、最初に小髙さんが始めたのが、まずふぐにつける「ポンス(ポン酢)」作りから(「ポンス」はオランダから初めて日本に来た時の言葉をそのまま使っているそう)。
秋の味覚として、松茸と一緒に宮城産のすだち・右と、千葉産の柚香(ゆこう)・左をプレゼン。
その柑橘類を、横のジューサーでしぼったものを合わせて、自家製のポン酢「喜見ポンス」をさーっと手作り。
ポン酢のレシピまで丁寧に店内で掲示されています。
ではあらためて、ふぐのコースがスタート!
まずは「ふぐと松茸のスープ」。
松茸の香りとふぐのうま味が合わさって素晴らしい。塩だけとは思えないほど深い。
ワイングラスで香りを取りながら楽しむのにぴったりです。
このスープをいただく間、料理長によるふぐの解体ショーが始まりました!
ただ、この図にもあるようにふぐは猛毒があります。
肝や心臓、卵巣など内臓に毒があるため、丸ごとのふぐを客前でさばくのではく、毒部位はすでに取って掃除して、食べられる「身」と「皮」部分にざっくり分けた状態から見せてくださいました。
皮も「とおとう身」や「身皮」など食べられる部位にそれぞれ名前があります。
これは内臓で食べられる部位、白子(オスの精巣)。
そして小髙料理長が皮部分をさばき始めます。
皮にさらに包丁を入れて、外の「さめ皮」と「とおとう身」に。
身にも包丁を入れてどんどんさばいていきます。
うーん、目の前で楽しむ解体ショー、ダイナミックで面白い!
ふぐの解体が完了!おいしくいただきます。
「湯引き まぶた」。ふぐの「さめ皮」の湯引きと、「まぶた」のポン酢あえ。どちらも通好みの希少部位。コリコリして美味〜。
「覗き向こう ブツ」。
細かく包丁を入れてふぐの身を「ぶつ切り」にした前菜。
「天然とらふぐのカラスミ」。
毒がある部位の卵巣を3年間塩漬けにして完全に毒を抜いた珍味。
そしてここで、「大阪とらふぐの会」の代表が次の料理について説明する短い動画を見ました。
なんと、猛毒のとらふぐの肝(肝臓)は出せない代わりに、最も味や食感が近い(しかも安全)という、別の魚の肝、題して「謎肝(なぞきも)」を出すとのこと!笑
この説明の後、出たのが「てっさ(ふぐの刺身)」です。お皿の向こう側が透けるほど薄ーく切ってあるお造り。
で、このてっさに添えられたのが「謎肝(なぞきも)のたたき」。
怖いような食べてみたいような……で、いただきました!
さっぱりしたフォアグラのような、本当に謎の不思議なおいしさでした。
謎肝や、自家製ポン酢でいただくてっさ、もちろん最高!
この細いねぎがおいしかったのです。
山口県の「ふぐネギ」という専用の品種だそう。
だいぶ紹介が遅れましたがこの日は日本酒をいただきました。
飲んだのは3種。
・九頭龍 純米/黒龍
・にいたしぜんしゅ 純米原酒/仁井田本家
・作ZAK 槐山一滴水(かいざんいってきすい)/清水清三郎商店
ずーっとワイン派だったのに、最近ある取材をきっかけに日本酒にハマり始めています。
ほんのり甘い日本酒、ふぐの各料理にそれぞれぴったりでした。
次の料理に行く前に、「(ふぐの)とげ塩」という自家製調味料の説明がありました。
引いたふぐの皮を乾燥させ、能登産の塩と混ぜたオリジナルのブレンド塩だそう。
「ふぐとかぼちゃのポタージュ」。その「とげ塩」と水、かぼちゃだけで作ったシンプルなポタージュです。
左にのっているのは「とおとう身」という皮の一部位をカリカリに揚げたふぐで作ったクルトン。まるで鶏皮のようでした。
「焼き白子」。画像そのままの味。クリーミーでたまらない……
「くちびるの塩焼き、スパイス(コリアンダー・山椒)とブラックペッパーで」。トゲや骨がない、通好みの希少部位だそう。
そして目の前でまた、料理長のマジックのようなプレゼンが……!
「ひれ酒」だったのでした。ドリンクというより、スープのようなうま味たっぷり。
そしてここからは、ふぐのあらゆる部位を「焼肉」さながらにシンプルに焼いて「焼きふぐ」で次々にいただきました。
「黒うぐいす(一番外側)」「とおとう身(皮の中側)」「身皮(さらに中側)」「厚身皮」「はらみ(内臓を覆っている皮)」と、さまざまな部位を塩焼きやしょうゆ風味、マーガオ(台湾のこしょう)風味、大根おろしと一緒になど……
「謎肝のソテー」まで。これはふぐじゃないけれど、美味でした(笑)
「ふぐの唐揚げ」。ふぐの「下あご」に下味をつけてこんがり揚げたもの。
これ、はっきり言って先に言われなかったら絶対にフライドチキンだと思っちゃう。そのくらい「肉肉しい」かったです。
焼きふぐをさんざん堪能した後に、またプレゼンテーションが!
小髙さんが削りたてふわふわのかつお節と鍋を準備し始めました。
ふぐの身をさっとだしでしゃぶしゃぶに。
「山北だし しゃぶしゃぶ」。まあこれ、おいしくないわけないですよね(笑)
たった1枚上品にいただいた後は……
ふぐ鍋の「てっちり」。骨付きのふぐの背肉を野菜と煮たもの。
そしてシメです。
卵でとじた「ふぐスープの雑炊」。まろやかでした。
ここまでで一人でふぐの身部分を500〜600g食べているそうで、お腹いっぱいではあるのですが、スルスル食べられている自分がちょっと怖しい笑
と言いつつ、デザートも別腹でしっかり。
豆乳アイスに削った栗とホワイトチョコレートが散った「ホワイトモンブラン」です。
お皿もすごいものばかりだったので改めてのせておきます。2つめのモダンなカップは京都の著名な陶芸家、小川宣之さんの作品。
最後のお茶碗はこの図柄通り、幕末期の黒船来航とかの時代のものだそう!
ということで高級とらふぐをありとあらゆる食べ方で全方位的に堪能した、贅沢な夜でした。
なによりふぐという食材が本当に不思議で。
さっぱり食べられるのにジューシーで濃厚、しかし肉並みの食べ応え感があってもスルスルとどこまでも食べられてしまう……
「このふぐって、本当に魚なんですかね?!」と食べながら小髙さんに何度も聞いてしまいました。
このコースは45,000円(一人分、税込・サービス料別)。
ミシュランのフレンチ並の価格で、最高級5-Sランクのとらふぐ(しかも養殖でなく天然もの)を、これほど(浴びるほど?)堪能できるコースはなかなかないのでは。
エンターテインメント性抜群で、目にも味にも満足感たっぷり。
ふぐを堪能したい方、一度訪れてみては(営業は火・土の週2日のみなので注意を)。
「大阪とらふぐの会 人形町 喜見(きみ)」
- 東京都中央区日本橋人形町1-5-5 芳町ビル B1
- 東京メトロ『人形町』駅 徒歩1分
-
03-6810-9337
- 毎週火・土の18:00〜23:00(L.O.22:30)の週2日のみ営業
※営業開始は原則、18時に全組一斉スタート(ただし調整の相談は可)
それでは、今日も最高においしい1日を!
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