食限定の取材歴20年、フードライターの浅野陽子です。今月大阪でイタリア大使館主催のイタリアチーズの料理イベントが行われました。その様子をレポートします。
チーズ専門家とイタリアンシェフの「学んで食べる」イベント
今月7月8日(月)、大阪のハグミュージアムで行われた「イタリアチーズ料理講習会」。
輸入チーズの第一人者・本間るみ子さん(チーズプロフェッショナル協会名誉会長)と、西口大輔シェフ(リストランテ ヴォーロ・コズィ/東京・千石)に、イタリアチーズの知識とレシピを教わる、という盛りだくさんのイベントでした。
今回のイベントはメディア関係者限定。大きな会場でしたが120名の枠はキャンセル待ちを含む満席になったそう。
日本は膨大な量の食べ物を輸入しているので、食の取材や執筆をやっている(と公言すると)、こういうイベントのお誘いは多いです。
逆にこうしたことを一生の仕事にしたい!という方に、フードライターはおすすめです(拙著『フードライターになろう!』にくわしく書いていますのでぜひ)。
イタリアチーズはピザから世界に浸透した
前半が本間るみ子さんによるセミナー「世界に広がるイタリアチーズ」、後半が西口シェフによるレシピセミナーという2本立てでした。
今では当たり前のように見かけるイタリアチーズが、世界中に広まったきっかけ。
やはりピザの人気からですが、それにともない、イタリアチーズの正規品を保護する制度(DOP=原産地呼称保護制度)もできました。
日本でイタリアチーズが広まったのは、東京オリンピック(1964年・第1回)の後にシェーキーズやドミノピザが上陸。その後、日本人のイタリアンのシェフが次々海外に修業に出て、1990年代の「イタ飯ブーム」につながり……という流れ。勉強になりました。
今の若い人は「イタ飯ブーム」ってわかりますかね?
スパゲッティーを「パスタ」と呼ぶようになり、ティラミスやパンナコッタを食べるのが最高におしゃれで、ドラマのデートシーンにもひんぱんに登場したり、一世風靡したのですよ。当時から妄想超特急な女子高生だったわたし。そんなカッコいい大人たちに憧れておりました(遠い目)。
ちなみにイタリアでは500種類以上のチーズを生産し、一人当たり年間20キロ以上食べるそうです(日本人はその1/9)。
そのまま食べるだけでなく、前菜、パスタやリゾット、ドルチェ(デザート)までイタリアではあらゆる料理にもチーズを活用。
日本ではモッツァレラやマスカルポーネ、パルミジャーノ・レッジャーノ、ゴルゴンゾーラなど名前を挙げるとパッと思い浮かぶくらい、イタリアチーズが浸透しているのもすごいですよね。
イタリア料理は和食とはまったく違うけれど、日本人の嗜好に合うんでしょうね。カルボナーラや、モッツァレラとトマト、バジルを盛り付けた前菜などなど、置いてないイタリアレストランはないんじゃないでしょうか。
ところでこの日セミナーを聞いていて、面白いなと思ったのは「フランスにはフロマジュリ(チーズ専門店)がどの町にもあるけれど、イタリアには存在しない」という本間さんの話。
チーズのある暮らしが当たり前なのに、なんで?と不思議だったのですが、「イタリアではチーズなしの料理はあり得ないので、食料品店で必ず食材と一緒に買う(ついで買いする)ものだから」だそう。
たしかに、フランスではチーズはデザートの前に食べる「独立したもの」だけど、イタリアでは料理とチーズは一体化してるのですよね。
イタリアチーズ料理のレシピセミナー
その後、セミナーは第二部のレシピ講習会へ。まさにプロのための料理教室という内容で、前菜7品にデザート含む4品、計11品のイタリアチーズレシピを習い、試食しました。
前菜「グラーナ・パダーノチーズのコンポズィツィオーネ(チーズの前菜の盛り合わせ)」。コク旨ハードチーズのグラーナ・パダーノを、せんべい状に焼いたり、ビスケット生地に混ぜたり、ムースにしたり、7つのパターンでシンプルに食べます。
続いてイタリアチーズを使った野菜の前菜やパスタが次々と登場。チーズの香りやコクを十分に感じ、さらに素材の味を際立たせていました。
特に冷たいファゴッティーニは、野菜のみずみずしさ、タイの刺身のフレッシュさをモッツァレラのもちっとした食感、酸味が引き立てていましたね。
厨房施設はあるとはいえ、レストランではなく会議室のような大会場でこれらの試食メニューが次々に登場。この人数にこの品数を、それぞれアツアツやキーンと冷えた状態で提供してくださることが素晴らしい。
しっかり勉強した後に、イタリアンのファインダイニングのフルコースをいただいたような、とても贅沢な講習会でした。これだけ食べてもしつこさや脂分を感じず、すっとちょうどよくお腹に収まるのもイタリアチーズの魅力なのでしょう。
習ったレシピを我が家のキッチンでも試してみたいと思います。
それでは、今日も最高においしい1日を!
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