食の取材歴20年のフードライターです。日々レストランとレシピを探求中です。イタリアンと魚が好き。

フードライターの仕事とは?食の取材歴20年の現役フードライターが完全解説します

フードライターの仕事

「フードライターってどんな仕事なの?」と本当によく聞かれます。

食限定の取材歴20年を超えたので、私が書ける範囲ですべてまとめました。

具体的にはどんな仕事をしているのか、フードコーディネーターとの違い、原稿料についてまでリアルに書いています。

「フードライターにどうやったらなれるの?」ともよく聞かれますが、これはここに書くと長くなりすぎるので、別記事でまとめました。

こちらも合わせてお読みください(フードライターになるには?食の取材歴20年の現役フードライターが徹底解説します」)

フードライターとはこんな仕事

(画像は今年、日本経済新聞連載コラム用に取材した新橋の「焼肉鶏gg(じじ)」さんで私が撮影したもの)

フードライターの仕事とは「食に関する文章・記事を書く」。本当にそのままです。
具体的にどんなことを書くのかというと、

・レストラン(人気店)の取材記事
・シェフや料理人、店長への人物インタビュー
・レシピ取材(料理研究家のスタジオやレストランの厨房でプロの料理を習い、一般のおうちで再現できるレシピに落とし込む)
・食のトレンドを分析して書く(「東京では餃子とワインのペアリングがブーム!」「2020年秋は下町イタリアンがアツい!」など、普段食の取材をしていて感じることを、トレンドとしてまとめて記事にする)

という仕事が多いです。

書いた記事は、食の専門誌(飲食業界のプロ向け・一般読者向け、両方あります)、一般誌(いろいろな話題を扱う雑誌)の食の特集、女性誌、ファッション誌、ビジネス誌、ウェブサイトなど……

食は万人に共通するテーマなので、食専門に限らず、いろいろな媒体から依頼をいただきます(細かい雑誌名は、過去の執筆実績をまとめた私のプロフィールをご覧ください)。

雑誌やウェブサイト以外に、レシピ本(食の書籍)の編集・執筆という仕事もあります。

私は過去に2冊書いています(『妊婦食堂』という妊婦さん向けのレシピ本と、『おいしい無印食品。』という無印の食品を細かく紹介した本↓↓)。

「書く」以外の仕事も2010年半ばから発生

テレビ出演

そして2014年あたり(食の取材歴15年を過ぎた頃)から、テレビ出演も定期的にお声がけいただくようになりました(過去のテレビ出演はプロフィールにすべてまとめています)。

バラエティ番組やワイドショーで食をテーマにした企画をやるとき「コメンテーターとして出てください」という依頼が多いです。

私は「食限定の取材歴20年のフードライター(「グルメ記者」の場合も)」と、テレビ局の人がキャッチコピーを付けやすいので、お声がかかるのかもしれません。

さらに続けて、岸朝子さんの「料理記者30年」を超える年数まで到達できればいいなと思っています。

ただ、ライター(出版業界)の仕事とテレビの出演者では、求められるアウトプットの形がまったく違うので、切り替えが必要でこれが結構難しいです。

テレビ出演の話は、ブログのこちらの記事に詳しく書いたので、興味がある方はどうぞ→「テレビに出たい人必見!もしテレビに出ることになったら、やるべきこと6つ

「フードライター」と「フードコーディネーター」との違い

「フードライターとフードコーディネーターってどう違うの?」とよく聞かれるので説明します。

フードライターよりフードコーディネーターの方が広義で、「フードコーディネーター=食に関する仕事をしている人すべて」とも言えます。

たとえば、
・雑誌やテレビで、「秋のさつまいもレシピ」「電子レンジで5分で作れる時短おかず」など
企画に合わせたレシピを考える人
・料理教室の講師
・ドラマ、映画の劇中で役者さんが食べる演技をする時の料理を作る人
・雑誌や広告撮影で、食器や小物を用意し、食のシーンを素敵に演出する人(この仕事は専門性が高く『フードスタイリスト』と名乗って活動する人もいます。この場合、料理を作る人は料理研究家やシェフなど別にいて、フードスタイリストと組んで仕事をします)
・病院や介護施設、社員食堂のメニュー考案やカロリー計算、栄養指導をする人(国家資格の「管理栄養士」が必要)
・新しい商業施設がオープンする際、レストランフロアやデパ地下に、どんなテナントを入れるか企画・交渉する人(フードコンサルタントとも言われる)

などなど……フードコーディネーターの仕事の領域はとても広いです。

それに対してフードライターは文章が主軸。「食についての文章を書く人」で、フードジャーナリストと名乗ってもOK。フードライターとフードジャーナリストの違いは明確にはありません。

私はより一般的なフードライターを名乗っていますが、食品ロス問題やフードサステナブル、遺伝子組換え食品といった社会的なテーマのときは、フードジャーナリストと紹介してもらうこともあります。

また私は文章を書くほか、料理を教える仕事も時々依頼されます。そのため「フードライター兼フードコーディネーター」という肩書きになることもあります。

どうやったらフードライターになれるのか?

まずフードライター(フードジャーナリスト含む)になるための資格は要りません。学歴も必要ありません。

「職業はフードライターです」と誰でも、いつでも名刺を作って名乗れます。ただしそれは「自称」フードライターであり、プロになっていなければ、出版社は使ってくれません。

私の周りにはフードライターに限らず、ファッションやITなどライター仲間は多数いますが、それぞれプロになるまでのルートは違います。

私の場合は大学卒業後、新卒で出版社社員に→独立という昭和・平成時代に一番多かったパターンです。

どうやったらフードライターになれるのか?について書こうとしたら、はしょっても長文になってしまったので、別記事にしました→「フードライターになるには?食の取材歴20年の現役フードライターが徹底解説します

フードライターに向いている人

原稿

食の取材を20年続けている私が思う、フードライターに向いている人は、こんな人です。
ーーー
・文章を書くのが他人より得意な人、好きな人
・食べることや飲むことが好きな人(お酒が飲めるのはマストではないですが、飲めた方がかなり有利)
・情報収集が好きな人
・好奇心が強く、新しいことを調べたり、知らない場所に出かけることが苦にならない人
・営業が得意な人
・自分に根拠のない自信を持てる人
ーーー

以下、ポイントだけ解説していきます。

[文章を書くのが得意な人、好きな人]

食に興味はあるけれど文章を書くのが苦手な人は、フードライターには向かないです。

今は圧倒的に紙よりウェブメディアが主流で文章量が多く、2500字以上は最低ライン。原稿用紙6〜7枚分くらいで、書き切ると結構体力を消耗する量ので、書くのが苦痛な人はつらいですね。4000字(原稿用紙10枚)は書いて、という依頼も多いです。

[お酒が飲めなくてもフードライターになれる?]

「食べることは好きだけれど、体質的にお酒が強くない、またはまったく飲めない」という日本人はいます。

飲めない人が絶対にフードライターになれない、というわけではないですが、酒は食文化と切っても切れない関係があります。

居酒屋取材や、ワインとのペアリングを書くフレンチやイタリアン、バルなどの取材ができないので、仕事の幅が狭まります。

ただ、そういう人はより専門性を高めて「スイーツライター」や「パン(ブレッド)ライター」「肉ライター」「デパ地下惣菜専門ライター」「ハーブ&スパイスライター」など、フードの中でもよりニッチな知識がある、という売りで活動すればよいわけで……
「ラーメンライター」と「カレーライター」はものすごくマニアな先人が何人もいるので、難しいかも)

[情報収集が好きな人/好奇心が強く、新しいことを調べたり、知らない場所に出かけることが苦にならない人]

これは絶対です。

もともと、フードライターには情報収集や検索能力が必須でしたが(取材前の下調べ、原稿を書く際にも補足情報が必要なので)、最近は「企画を提案して、自分で取材を組んで、原稿を作って」という仕事が年々増えているので、ネットとリアル両方で、多方面から情報が集められないと仕事が受けられないのです。

そして情報を集めるためにはいろいろなことに興味を持って、首を突っ込んでいく好奇心がないと続きません。メディアの仕事全般に言えますが、出不精とか新しい人に会うのがストレス、という人は向いてないです。

売り込み

[営業力がある人]

これはフードライターに限らず全フリーランスに言えますが、営業力(知らない相手に自分を売り込む力)も必要です。

それには、「私ほど食の文章が得意な人はいない!」と根拠のない自信(笑)を持つことも重要です。

会社員と違い、フリーのライターの収入源は「自分が書いた(関わった)仕事分の原稿料のみ」なので、仕事を自分で増やしたり、新規のクライアントを獲得しないと収入が途絶えてしまうからです。

フードライターの原稿料は?

人によって大きく異なります。1回の取材・1本の記事にかける作業量はほとんど同じなので、原稿料が高い仕事を短期間でいくつもこなしているライターは月収も年収も高いです(400字でも2000字でも、取材が1回なら文字数の多さは労力とあまり影響しません。詳細は次の項目で)。

原稿料の相場は、1記事1万〜10万円くらいでしょうか。「相場」と言っても幅が大きいですね。

そして有名な雑誌に書くから、文章がうまいフードライターだから、ベテランだから……原稿料が高い、ということでもありません。その出版社が一律で設定している原稿料によります。

文字数に関係なく「1ページいくら」という設定と、書いた「文字数」から原稿料を細かく計算する出版社もあります。

またウェブメディアは、雑誌と違ってページ数や誌面の枠がありません。

なので最低の文字数だけ言われて、1記事いくら、という設定が多いですね。

しかしなぜベテランと新人、文章がうまい人と下手な人が同じ価格設定なのか?(実はライターと名乗っていても文章がうまくない人もいたりします)。出版業界の謎の一つですが……

そのライターの執筆経験が少なくても編集者の目に止まり、仕事を依頼されたらいきなり高額が発生する可能性も十分あり得ます。

が、大手出版社や有名な雑誌は、原稿料の設定が高めで、編集者も一定レベル以上のライターとしか仕事をしていないため、見る目が厳しいです。

新規発注のライターには、事前に実績をかなり調べ、その人が過去に書いた記事も相当数読み込んでから依頼をかけるので、仕事をもらう前に実績や力量が選別されているとも言えます。

しかし総じて、フードライターの収入は高くない(と個人的には思う)

「原稿料1本10万円ってすごくない?」と思うかもしれませんが、それはかなり高い方。そんなに払ってくれる取引先は本当にまれです。そんな原稿を月10本を依頼される、ということは絶対にありません。

さらに年金や税金、健康保険(国保)も毎月自分で払っていますし「原稿料に交通費は込み」という出版社も少なくなくありません。

さらに自分で企画を出す仕事は自費のリサーチも必要なため、経費がまさに湯水のように出ていきます。

日本語は誰にでも書けるが、「取材から良質な文章を編み出す」のは高度な知的作業かつすごい労働量

取材して書く

また、事前に準備して取材で話を聞き一定の文字数にまとめる、という仕事は非常に高度な知的作業です。

1時間インタビューを行い、文字に起こすと要点だけ抜粋しても5000字くらいになります。私は学生時代タイピングスクールに通っていたので、ブラインドタッチは早い方ですが、それでも1時間の取材音声を文字化するのに1時間強くらいかかります。

音声起こしを自動でやってくれるソフトはありますが、まだ翻訳ソフトよりも日本語がおぼつかないレベルで、仕事では使えません。しかも起こした文字データは完全に話し言葉なので、それだけでは原稿になりません。

文字起こしデータを読み返して面白いポイントを抜粋し、そのレストランの成り立ちや開業年、メニュー、値段、シェフの経歴など事実情報を調べ、試食したときのメモも足し、タイトルや見出しを付けて決められた文字数内に収め、読みやすい原稿に推敲して締め切りまでに出す、というのが一連の作業です。頭も時間も労力もかなり使います。

雑誌の場合はさらに細かくて、誌面イメージを編集者が設計図にした「ラフレイアウト(「ラフ」や「ラフレ」と呼ぶ)を元に原稿にします。雑誌は1行の文字数・行数・段落まで決まっているので、そこから1文字もオーバーしないようにきっちり作ります。

5000文字プラスαの膨大な生データから、何をどの順で出すか構成を考え、原稿を書き、最後に文章全体にやすりをかけて読みやすくなめらかにする。「原稿を書くって大木から美しい仏像を掘り出すのと似ているな」と毎回思います。

事前準備・取材・音声起こし・書く・校正(印刷前のゲラチェック)を含めると、私はどれほど急いでやっても1記事9〜10時間かかってしまいます。

ライターの仕事は「手を抜く」ことがどの作業でもできないのです。原稿料を割る10が私の時給で、3万円の原稿なら時給3000円。

時給3000円は、社会人20年以上の大人としては決して高くないと思います。ただ、食の取材や執筆が大好きで、これ以外の仕事ができないから続けている、というのが実情です。

フードライターは印税で稼げる?

これもよく聞かれます。

「印税生活でガッツリでしょ?」などと言われることがあり、出版業界以外の人に印税はビッグドリームに聞こえるようです。が、1000円の本が100万部のベストセラーになれば印税は1億円(著者は本の売上の10%)をもらえるものの、料理本の世界では1万部で小ヒット、5万部で大ヒット、が常識。

1年くらいその仕事だけに付きっきりになって、ヒットしたら1万部で印税100万円もらえても、12で割って月収8万3000円。これって“ガッツリな夢の仕事”なのでしょうか。

つまりフードライターが印税でガッツリ状態になる確率は、宝くじ以上に低いです。また「印税率が売上の10%」は業界の一応の基準なものの、絶対ではありません。「原稿料を高くする代わりに印税率は8%に下げてほしい」などと出版社に頼まれる場合もあり……

正直「大ヒット間違いなし、と印税を期待して仕事をする」というライターは、フードライターに限らずいないと思います。

まあ、みんな夢は捨てずにがんばっている……というのは共通していますが。

フードライターのひと昔前(2010年以前)と令和2年現在の大きな差

世の中はどんどん変化していますが、フードライターをめぐる事情も特にこの10年で激変しました。

いいことも悪いことも両方あり、まとめました。

[2010年以前のフードライター]

その編集部から初めて仕事を依頼されるきっかけ:
知り合いの紹介か、自分で編集部に売り込みに行く(経験者しか受け付けてもらえないが、仕事をもらえる可能性は十分ある)

仕事の依頼のされ方:
すでに仕事をしている編集者から「○月X日、こういう企画があって取材アポが取れているのだけれど、受けてもらえますか?目安の文字数(またはページ数)、納期はこのくらいで」とアポありきの口約束で依頼される。

フードライターは(取材の下調べはした上で)ただ言われた日時と場所に行って取材し、ラフレイアウトをもらって締め切りまでに原稿を作る。

撮影はカメラマンが別にいるので、自分の作業領域に入らない。

原稿料:依頼される時点では未定(これもすごい話ですが)
原稿料がいくらか、現場ではなぜか聞いちゃいけない雰囲気になる。なんとか聞きだすと、編集者も知らないというパターンも多い(この時点では最終的な文字数や雑誌のページ割が決まっていない場合が多いため)。

[2010年以降〜現在のフードライター]

その編集部から初めて仕事を依頼されるきっかけ:
知り合いに直接紹介されるか、自分のウェブサイトやSNSに連絡が来る
(出版社はどこも台所事情が非常に厳しいので、昔と違って今は編集部への売り込みは経験者でも不可。有名誌でも少人数の旧知のライターで回している状態)

仕事の依頼のパターン:
仕事の内容は取材一本ではなくバラエティーに富む。取材の場合は「企画を出して、アポを自分で取って取材して原稿を書いて」とライティング以外の編集者的業務も求められる。

取材案件によってはカメラマン業務も求められる。なので撮影もできた方が仕事の幅が広がる。紙媒体でなくウェブ媒体

原稿料:原稿料は最初から明確に提示。それを発注側・受注側双方に事前に確認済みですという「取材依頼書」というものも交わす。

令和版・最新のフードライター

インフルエンサー

新卒で出版社に就職した私は、ほぼ平成初期から20年、この仕事をしています(言いたくないけど)。

こうしてまとめてみると、10〜20年前のフードライター(他のジャンルのライターも同様)より、今の方が企画立案や取材アポ取り、場合によっては撮影までしなくてはならないなど、文章を書くこと以上の総合的スキルを求められています。

ただし昔は「知り合いのツテ」や棚ぼた的に一部の人だけがたどり着けた職種だったのが、検索力と情熱を駆使すれば、門戸は格段に広がっています。

詳しくは「フードライターになるには?食の取材歴20年の現役フードライターが徹底解説します」という別記事にまとめたので、そちらもご覧ください。

 

いかがでしたか。
「フードライターの仕事とは?」を、食限定の取材歴20年の経験を元にご紹介しました。
ご興味ある方は、参考にしていただければと思います。
こちらもぜひ合わせてお読みください(フードライターになるには?食の取材歴20年の現役フードライターが徹底解説します」)

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