東京で緊急事態宣言が出る前の4月中旬、南青山にある「ナリサワ(NARISAWA)」に行ってきました。
『ミシュランガイド東京 2021』で二つ星を獲得し、ジャンルは「イノベーティブ」に入る店です。
今回はその訪問レポートです。
「革新的里山料理」がコンセプトの高級店
ナリサワは「青山一丁目駅」から徒歩4分の場所にあります。
料理のジャンルは「イノベーティブ(革新的)」。
最も近いのはフレンチですが、ひと言でいうなら「料理人の個性を生かした強い創作性があり、従来のどのジャンルにも属さない新しいジャンルの料理」でしょうか。
(10年前くらいまでは「フュージョン」と呼ばれていて、フュージョンという言葉は、私が食の取材を始めた2000年頃からアメリカやオーストラリアで流行っていました)
ナリサワのオーナーシェフは、国際的な受賞歴多数の成澤由浩さん。
ウェブサイトには、成澤シェフによる店のコンセプトが明記されています。
NARISAWAの料理は、日本の里山にある豊かな食文化と、先人たちの知恵(里山文化)をNARISAWAのフィルターを通して料理で表現するInnovative Satoyama Cuisine “イノベーティブ里山キュイジーヌ”(革新的 里山料理)という独自のジャンルである。
出典:http://www.narisawa-yoshihiro.com/philosophy
これだけ読むと「なんのこっちゃ?」と思われるかたの方が多いでしょう……
以下、実際に私が食べた料理をご覧ください。
なんとなく、成澤シェフの世界観が伝わるのではと思います。
美しい日本の田園風景をテーブルで再現したようなフルコース
ナリサワはコース料理のみでランチ・ディナーともに同じ内容・価格ですが、ランチだけ半分の皿数(6〜7皿)の「ハーフコース」(24,200円)があります。
この日はで女性の友人と2人で昼に訪問し、ハーフコースとワイン・日本酒のペアリング(ワインのみでもOK)をいただきました。
乾杯は日本酒(純米大吟醸 「満寿泉(ますいずみ)」)
“森のパン 2010”・苔
名物の、目の前でパンの生地を発酵→客席で焼くところまで見せるプレゼンテーション。
シャンパーニュ ドン・ペリニヨン(2010年)
神奈川 稚鮎・桜
そしてコース開始。
揚げた鮎を指でつまんで食べる料理なのですが、皿の中で鮎が泳いでいるよう。
皿にポツポツ見える透明のしずくは、実はソース。
昆布で取っただしと、桜の香りを付けたエッセンスがソースのベースで、しっかり味が付いています。
ここから「わあー……」とため息が出ます。
美しいだけでなく、ホクホク、カリカリでこの鮎がおいしいの。
このタイミングで森のパンも焼き上がりました。
苔のようなバターも添えられて、不思議。
だんだんと脳内が森の中で食事をしている気分に。
山口 トラフグ・京都 米
京都米を使ったリゾットに、とらふぐのあられ揚げをのせた料理。
日本酒 純米大吟醸 「満寿泉」の「寿」
「寿」は、先ほど乾杯で出た満寿泉の、さらに米を磨き上げて(削っておいしい部分だけを使って)造った銘柄だそう。
石川 赤ムツ・茨城 レンコン・島根 花山椒
炭火焼きした赤ムツを、レンコンもち、花山椒(おいしい時期が年間で3週間しかないそう)で食べる料理。
シャサーニュ・モンラッシェ(赤) 2016 DOMAINE FONTAINE-GAGNARD
骨格があり、力強いけれどエレガントなピノ・ノワールがこの香ばしい魚料理にぴったりで。
ちなみにワインはこれが最初に注いでもらった量です。
ごく少量ずつ、いろんな品種(日本酒も)を料理と合わせるのがナリサワスタイル(結果的におなかにすごく楽でした)。
“五穀豊饒” 富山 サワラ
この稲穂がのった、皿のおおいが開かれるとびっくりする。
器を囲むぐるぐるは、青こごみ、赤こごみ、たらの芽を使ったソースだそうで。
やわらかいさわらの身をくずして、こうやってソースごとすくって食べてくださいと。
シャサーニュ・モンラッシェ・プルミエクリュ・ラ・ブードリオット(白) 2017 DOMAINE GAGNARD-DELAGRANGE
白い花の香り、酸が強すぎない。
この料理のインパクトを壊さず、ワインが引き立てるのもすごい。
“ラグジュアリーエッセンス” 静岡 赤座海老
えびのまわりに張ったスープは、鶏肉や生ハムから取ったスープだそうで、濃厚。
全体的にさっぱりしているのに強烈。
ああ、思い出したらまた食べたくなってきた。
日本酒 純米大吟醸 「満寿泉」の「土遊農(Do You Know)」
ブルゴーニュ1級白から再びエビに合わせて日本酒。
富山の有機栽培米・イセヒカリで造った希少な純米吟醸酒だそう。
北海道 蝦夷仔鹿・京都 白子筍
エゾシカのロース肉バター焼きと、備長炭でじっくり丸焼きにしたタケノコを、木の芽と白味噌、麹で作ったソースと。
このメインが出る2皿前、「タケノコをこんな風に焼いたものを後でお出しします」と成澤シェフからプレゼンがありました。
そのタケノコが、こうやって肉の付け合わせになったのだと。
このエゾシカの肉がやわらかくて美味(涙)
臭みもまったくなし。
ヴォルネー・シャンパンズ プルミエクリュ(赤) 2014 GAGNARD-DELAGRANGE
最後に合わせるのはブルゴーニュ。
タンニンがやわらかく、肉の味の繊細さにも合っていました。
茨城 イチゴ・熊本 阿蘇ミルク
デザート1つめ。
アイスクリームと濃厚なイチゴのソース。
甘みと酸味を同時に楽しむ、見た目通りの味。
アイスの下にはブランマンジェが隠れていました。
福岡 八女茶・富山 最中
最後の小菓子。
和三盆と抹茶を使ったゼリーをはさんでひと口で食べる最中(もなか)です。
もー、食べました。
でも「苦しい」のとは違う。
もんのすごく満たされた気分です。
「グルメな大人たち」が主な客層
会計は一人42,740円(ワイン&日本酒ペアリング・税・サ込み)でした。
トータルで2時間弱くらい、ただただ、素晴らしかったー……。
最高の贅沢でしたが、本当に心身が満たされ「血肉」となった、食事でした。
コロナ禍以前は海外からのグルメな観光客で早々にテーブルが埋まってしまっていたようです。
私が訪問した日は日本人の「グルメな大人の方々」、同性の2-3人連れやカップルが中心でした。
今回予約を入れたのは1ヶ月弱前(ナリサワは1ヶ月ごとに予約を取るシステム)。
コロナ前だったら無理だったと思います。
日本人しか行けない今は、逆にグルマンの方にはチャンスなのではないでしょうか。
(都内の三つ星店では、それでも半年先まで満席の店もいくつか見ました)。
「ナリサワ(NARISAWA)]
- 東京都港区南青山2-6-15
- 東京メトロ『青山一丁目』駅 徒歩4分
- 03-5785-0799
- 12:00-13:00(L.O.)、18:00-20:00(L.O.)/月曜定休
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http://www.narisawa-yoshihiro.com/
(予約は電話かウェブサイトから)
今回はプライベートの訪問でしたが、2年前に『Time Out TOKYO』の仕事で成澤シェフを取材しています。
その時の記事です。