ものすごくいまさら…ですが、地上波の再放送で『君の名は。』を見ました。結論としてはとてもよかった。
昭和世代だと、男女が入れ替わるという設定にどうしても大林宣彦監督の『転校生』を思い出し、『君の名は。』をすでに見た人に「あれとどこが違うの?」という質問をしてしまうのですが(私だけ?)、全然違う。
CMでさんざん流れた「私たち、入れ替わってる?!」と叫ぶ予告動画がいけないと思う…あれがインパクトがありすぎて、昭和世代は「また『転校生』っぽいやつか」と思いがちなんですよね。でもそれで躊躇している人には、ぜひ見てもらいたいです。ほんと違うから。そして感動するから。
見てない人にネタバレしないように、私なりの感想を書きます。画像は映画の切り取りではなく、ちゃんとしたフリー画像です。
映像美と展開の速さがとてもいまっぽい
冒頭の画像は、映画の中でよく出てくる空のシーンです。いろんな人が書いているけど、元はアニメ(人が描いた絵の連続)であることを忘れるほど、こうした空とか、山とか街中とか、本当にリアルで。しかも美しい。
シーンごとの描写が、ものすごく細かいんですね。そしてそんな、大量の労力を使って細かく描き込んだようなシーンを、惜しげもなく?パッパパッパと切り替えていて、それにもびっくりします。
切り替えのスピードは速いけれど、平成30年の忙しさを生きてる人なら、ストーリーの理解とともに、十分ついていける速さ。このいろんな要素を詰め込んでいるけど「詰め込みすぎてさっぱり理解できない!」というレベルではない、ギリギリのところで抑えているのが、新海監督のセンスなのだと思いました。
メッセージは「世の偶然は必然であり、必然は偶然から生まれている?」
「世の偶然は必然であり、またその必然は偶然から生まれている」が、言いたいメッセージなのかな?『君の名は。』を見て、私が思った感想です。ちなみに私は「妄想」は大好きですが(笑)、ファンタジー系は苦手。でもそう感じて、面白かった。
そしてこの感想、禅問答っぽいけど…すでに『君の名は。』を見たという男性2人と話して、私がそう言ったら「なるほどねー」と2人ともうなずいてくれたので、まったく見当違いの感想ではないかと。
「人間2人の中身だけが入れ替わる」ってこと自体がすでにファンタジーで、あり得ないのだけど…でもいま、自分がこうやって東京で平和に暮らしていることも、ルーツを数百年さかのぼれば、同じくらいファンタジーなのかなと。
偶然の積み重ねが「必然」に変わっていく
いろいろな、果てしない偶然の連続ですよね。そしてその偶然の結果、2018年に実際に私がそうなっているということは、もっと大きな運命の流れから見ると、必然だったのかなと。
そう思うと、自分に近い過去では大変な戦争を経験し、出征もしたのに生き延びてくれた父・母方両方の祖父2人に感謝の気持ちが深く湧いてきました。まあ、それは私だけでなく、いま日本に住んでいる日本人の大半が「太平洋戦争で生き延びた人の子・孫世代以上」なので背景は同じですが。
また、自分自身で起こした偶然では、私は20代で勤めていた出版社で職場結婚をしたので、「その会社を新聞の就職情報欄からたまたま選ぶ」ところから、いまの必然が始まっていたんだな、という気持ちにもなり…
どんな人でも、現在の居場所をふり返れば全部、偶然と必然で成り立っているのですが、そういうシンプルな、運命への感謝の気持ちを思い出させてくれる作品でした。
*若い人だけじゃなくて、中年以降も楽しめるよ、という話*
なので「主人公の設定が高校生だし、なんか自分がもっと若い頃見た『転校生』と似てそうだから見てない」という大人の人には、食わず嫌いせず見てほしいな、という話でした。
しかしあの作品のために、アニメの原画を何万枚(万じゃすまない?)作ったんだろう…デジタルでいろんなことが簡略化されているとは思うけれど、壮大な作業を乗り越えて、世に作品を出した監督や製作チームは、本当にすごいです。