フードライター浅野陽子の美食手帖

食の取材歴20年のフードライター(子育て中)がレシピ、レストラン、仕事話などを紹介するブログです。著書『フードライターになろう!』全国書店で発売中。

五目あんかけ‘どろり’焼きそば/半年後の気持ち

_blog■先週1月19日で、母を見送ってからちょうど半年経ちました。この日作った「長崎皿うどん」。市販の麺とスープの素がセットになっているものを使うので簡単。しいたけや豚肉、もどしたきくらげを炒めて、とろっとしたあんにしてパリパリの麺にかけて食べます。
ちょっと豪華にして、えびや塩抜きしたあさりも入れました。
いろんなだしが出て本当に美味しい!焼きそばは夕飯っぽいメニューではないけれど、これはバランスよく栄養が摂れるしよいのではと思う。

■母は、東京生まれですがこれが大好物でした。「今日も‘どろり’焼きそばよー」としょっちゅう作ってわが家の定番だった。半年目、これを私も作って夫と食べて、母を想いました。市販品のスープをベースに、酒、しょうゆ、ソースなどをいつも適当に、計量せずに加え「あー今日はすごく美味しくできた!」「今日はいまひとつねぇ」と毎回言っていた母。

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■ところで母を亡くして半年、年が明けたらふーっと、自分の気持ちを一歩冷静に見られるようになって不思議です。
去年の年末までは、まだ悲しみが生々しいままで。
母は7月、猛暑の真っただ中に亡くなったので直前は毎日、汗をかきながら実家に通い料理を作ったり奮闘していました。
その後8月、9月・ ・ ・と時間が過ぎ、その間新しい仕事を受けたり、身辺はめくるめく動いているのに、母まわりの記憶だけは止まったまま。12月に入り、クリスマスの飾りつけを出そうと納戸に上がったとき、ふと「私の気持ちは夏のままなのに、もう世間は冬になっている!」と気づき愕然としたのです。

■そんな頃「はなちゃんの味噌汁」という、5歳で病気のお母さんを亡くした女の子の著書をテレビで紹介していました。「はなちゃん」本人も出てきて「お母さんは私の心の中に生きている」と言っていた。心のお母さんとの約束を実行するため、味噌汁を毎日がんばって作りながら、お父さんと二人けなげに生きているのだそう。

■テレビとして見たら泣ける美談なのかもしれない。でもこれを見たとき、直感的に「ウソだ!」と、その商業的さに腹が立った。30半ばもとっくに過ぎた私がこれだけうじうじ立ち直れないのに。こんな小さな子が「心の中に生きている」なんて、そんな達観できるはずがない。

■しかし今年父と、妹の家族と、初めて母抜きの年末年始を過ごし、さらに先日の箱根家族旅行に行ったら不思議とさみしくなかった。箱根は2年前、まったく同じ場所・同じホテルに母含め家族で行ったばかり。どれだけ悲しい気持ちになるんだろう、と思っていたのに、そうは思わなかったのです。旅行中いつも温かいというか、「いないけど、いる」ような(霊が見えるとか、そんなんじゃなく)。

■これが、心の中に生きているということか、と初めてわかりました。決して忘れたわけじゃない。悲しみも、思いも質・量的にはまったく同じなんだけど、毎日共存している感じ。同じ体験をしないと、絶対にわからないことだなぁと。

■不幸にも、早くに親や大切な人を亡くす境遇になった方には、その境地に行ける日が来ることを伝えたいです。そして、私と母、それぞれほぼ同じ年齢で自らのお母様との別れを体験され、「共存できる日が来る」ことを早い段階で教えてくださった、R子さん(料理教室の生徒さん)にも本当に感謝したいです。ありがとうございました。

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