ホテルで美しい音楽を鑑賞後にそのまま美食を堪能、レアすぎる饗宴
食限定の取材歴20年、フードライターの浅野陽子です。
美しいクラシック音楽を鑑賞した後、同じ場所で美食も楽しめたら……そんなレアすぎるイベントが3月19日に宮城県の仙台国際ホテルで行われ、取材してきました。
同ホテルでは、コロナ禍で休止していた宴会場を再開することに。それを祝う記念イベント「サイ・イエングァン リサイタル&至福の晩餐会(第11回)」です。
中国(大連)出身の世界的ソプラノ歌手・崔岩光(サイ・イエングァン)さんと、演奏家活動30年の大人気エレクトーン奏者・神田将(かんだ・ゆうき)さんのリサイタルを鑑賞し、そのまま同じホテル内で美食を堪能するという夢のようなディナーでした。
美食の目玉は究極の「自家製減塩生キャビア」
料理を手がけるのは菅井敏彦総料理長(厚生労働大臣表彰/宮城の名工/ディシブル・オーギュスト エスコフィエ)と羽田満副料理長(黄綬褒章/宮城の名工/現代の名工)です。
宮城県内でも“食のホテル”として評価される同ホテル。
「何か新しい驚きを」、と野口育男総支配人(兼・東武ホテルマネジメント株式会社 代表取締役副社長料理長)が料理長たちと生み出した「ホテル自家製キャビア」も目玉でした。
国産の高級チョウザメを、ヒマラヤ岩塩クリスタルソルトで仕込み。塩分濃度をギリギリまで(3%)抑えることで、魚卵のうま味やフレッシュな食感を感じられる、究極の減塩キャビアが完成したそう(キャビアの塩分濃度は7〜10%)。
コースの随所で、このキャビアを楽しめました。
シャンパーニュと美しい歌声で、心も喉もふわっとほどける
当日は夕方16時にドアオープン。アペリティフを楽しんだ後、グラスを持ったままホテル内の会場へ(グラスはスタッフの方が回収)。
サイさんと神田さんが登場し、1時間半の生リサイタルを鑑賞。
滝廉太郎作曲の「花」など、日本人になじみのある楽曲が多く楽しめましたが、はるか昔に自分の結婚式で使った「オンブラ・マイ・フ」や、亡き母が実家のピアノで演奏していた「庭の千草」がサイさんの美声で流れ出し思わず感涙……。いやー、音楽っていいですねぇ(涙)。
名工の味とキャビア尽くし、各国の銘酒マリアージュの饗宴
そんな感動に浸ったまま、上のディナー会場にするっと移動。午後6時、心は満たされているものの、ちょうどお腹が空いてきた頃合いで最高です!
野口総支配人が乾杯の挨拶をされました。
「うちのホテルの看板は、なんと言っても大宴会。コロナ禍で『宴会場閉鎖』の危機もありましたが、ついにこの日を迎えました。私も目からウロコが落ちた、スタッフ渾身の自家製キャビアをご賞味ください!」と熱いメッセージが。
お酒はこんな豊富なラインアップが並びました。
「『キャビアにはシャンパーニュ』の定石がありますが、私も試飲し、このキャビアには日本酒や紹興酒も合うのでは、とご用意しました。ぜひ最高のマリアージュを見つけてください」(野口支配人)
優しい塩気とプリプリのフレッシュな食感は「和洋中全方位」とマッチ
さっそくキャビアが登場。なんと「軍艦巻き」スタイルです。宮城・登米産「つや姫」に宮城・七ヶ浜産の焼き海苔と、地元食材尽くしのスペシャルすし。キャビアの塩気を生かし、しょうゆは付けずにいただきます。
食感プリプリ、潮の香りを感じるキャビアに海苔の風味、粒だちのよいシャリが重なり、小さいけれど存在感の強いアミューズ。食べたゲストからは「おお」「なるほど」と次々に声が上がっていました。
次のキャビアは洋風。カブはキャビアと好相性なので、ムースやスライス、ソースとさまざまな形状で合わせます。
「もものすけ」(仙台産の赤カブ品種)と「サラダ蕪」という2種のカブを使用。もものすけのピンクが映えています。
今度はキャビアを中華風に仕立てたものを集めたオードブル。ワインか紹興酒、どちらを合わせるか迷うのも楽しい。自家製キャビアのみずみずしさや、食感は野菜とも合いますね。
伝統のコンソメスープは清らかな味とビジュアル
これはドリンクに見えますが、料理なのです。牛肉と香味野菜で取る同ホテル伝統のコンソメスープ。ゲストの目の前で、一人分ずつ熱々のポットからサーブされます。
この洋風ともう一種、中華の上湯(シャンタン)スープが同時に提供されました。シンプルな見た目ですが、清らかな飲み口に食材のうま味が凝縮していました。
現代の名工が手がける贅尽くし、メインの魚・肉料理
ここまでで十分贅沢ですが、魚と肉のメインはさらに豪華でした。
魚料理は気仙沼産の高級フカヒレを部位別に異なる味付けで煮込み、ひと皿で食べ比べするもの。食感の違いもよくわかります。
肉料理は仙台の黒毛和牛(骨付きサーロイン)のローストビーフ。絵画のように額装?されてステージに登場し、総料理長のプレゼンの後カットされ、提供されました。
絶妙な火入れでやわらかく、とろけるような口当たり。ブルゴーニュの赤とぴったりでした。奥のクレソンに隠れてしまいましたが、「ヴィオレマスタード(スパイスやブドウの風味のある紫のマスタード)」がアクセントです。
デザートでもキャビアが再登場
デザートタイム。オードブルでも出てきた仙台産の赤カブ「もものすけ」が再登場。
カブのピュレに牛乳と生クリームを加え、驚きのアイスにしてしまったとのこと。自家製キャビアの優しい塩気が合っていましたね。
若手スタッフが踊り、燃え上がる?炎のデザートパフォーマンス
と、ここで会場が暗転。軽快なJポップの音楽が流れ出し、若手チームのパフォーマンスが始まりました。次のデザートに使う「フレーズジュビレ」(イチゴの温かいソース)の演出です。
熱したフライパンにバターやレモンの皮と果汁、砂糖、イチゴ、アルコールを入れてフランベし、デザート用のソースを作ります。
火入れやレモンの皮むきを、全員でぴったり音楽に合わせるため、何度も練習されたそう。ブルーの光が豪快に立ち上り、「炎のデザート」は大成功。
出演者の皆さんの緊張しながらもはつらつとした表情と、ゲストが手拍子で応援する会場の一体感が温かったです。野口支配人のアイデアで、社員教育も兼ねているそうで、すてきな演出でしたね。
温かいソースがかけられると、アマゾンカカオ(ペルー産の高級チョコレート)の器はとろりと決壊。ミルクジェラートや朝摘みイチゴが現れ、目にも楽めました。
ソプラノリサイタルからのレアな饗宴は大団円を迎え、お開きに。幸せな気持ちで満たされました。
今回で11回目となるこのイベントは大好評で、チケット(39,000円/料理・ドリンク・税サ込み)は200枚分が即完売。コロナ前から、毎回参加するリピーターさんも少なくないそうです。
野菜と地元食材たっぷりの朝食ビュッフェでまた食べる
晩餐会の参加者は地元の方がメインだそうですが、私たち東京出張組はホテルにそのまま宿泊。そしてこれだけ食べたのに翌朝また、朝食ビュッフェを堪能してしまいました。
名物の「新鮮 地場野菜しゃぶしゃぶ」ほか、地元食材が並ぶ仙台国際ホテルの朝食は大人気だそうです。本当に四次元ポケットのようにするすると入りました。
次回の宴会場イベントは今年の秋、2023年9月18日(月・祝)。三遊亭竜楽さん(国際派落語家)による「古典落語と小粋なディナー」というプレミアな饗宴があるとのこと。
気になる方はチェックしてみてください!
それでは、今日も最高においしい1日を!
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