フードライター浅野陽子の美食手帖

食の取材歴20年のフードライター(子育て中)がレシピ、レストラン、仕事話などを紹介するブログです。著書『フードライターになろう!』全国書店で発売中。

ステーキと焼き魚をおいしくするのは、塩の値段よりも「使う塩の量」

先月「カンブリア宮殿」で沖縄の「雪塩」が特集されていました。その回のタイトルは「急拡大!料理が激ウマになる絶品塩ビジネス!宮古島発、故郷への愛が生んだ食卓革命」。

雪塩自体は生産者の熱意がこめられたいい商品だと思うし、私は那覇雪塩の店舗(まーすーや)にも行って、味見しておいしかったけれど、(雪塩に限らず)塩を変えたら料理が激ウマになると言い切るのは…

塩の品質も大事だけれど、ステーキや焼き魚など、塩でダイレクトに味を決める料理は「使う分量」が大事だと思います。塩が濃すぎると最悪だけど足りなくても物たりず、いい素材もよさが半減してしまうから。

カンブリア宮殿雪塩の回は、こちらのリンクから。

[blogcard url="http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/2017/1109/"]

塩は好きでたくさん持っているけれど…

食の取材をはじめたばかりの頃、「モロッコの岩塩」を仕事でもらって、パスタのゆで湯に使いました。ピンク色のごろごろしたかたまりで、よくわからないまま、肉たたきで砕いて入れてみた。

岩塩

すると、パスタをゆではじめると、いままで体験したことのない、バラのような高貴な香りが立ち…なにコレ?!と感動した記憶があります。

以来、塩には興味があり、いくつかそろえています。ひんぱんに使う、そんなにお高くない塩のほか、

イタリアの海塩

イタリアの海水で作った塩。粒が大きく、煮込みやスープなど少し時間をかける料理じゃないと溶けにくい。

岩塩

削るタイプの岩塩。硫黄っぽい香りと味。これが味わい深い。ゆで卵にかけるとおいしい。

沖縄の海塩

沖縄の同じスーパーで買ってきた2種類の塩。どちらも沖縄の海水を煮詰めた塩なんだけど、味が全然ちがって面白い。

沖縄の海水塩

パッケージのままだとわからないけれど、同じびんに入れると、見た目もちがうのがはっきりわかる。

塩のちがいは、料理の味に明確に反映されるか?

上にあげた塩は、塩だけ食べてみるとそれぞれ全部味がちがいます。スーパーで一番安い、サラサラに精製した食卓塩は「ガツッ」としたしょっぱさだけ。 ※食卓塩も元は海水からできているが、にがりが取りのぞかれている。値段の高い地場ブランドや輸入の海水塩や岩塩とのちがいについては、(社)日本塩工業会のこちらのページ雪塩のサイトでも解説。

でもイタリアや沖縄の海水塩や、岩塩はもう少し丸みがあり、だしを使ったような、しょっぱさ以外の味の広がりがあります。なので予算の範囲内で、ランクを上げた塩を使ってみて欲しいとは思いますが…

プロの料理人には「肉は海水塩より岩塩」「煮込みや下準備には安い塩、最後のひとふりだけは高ランクの海水塩」など持論があります。

塩とスプーン

でも家の料理の最終的な仕上がりに、塩自体の味のちがいってそこまで明確に反映されるかな?というのが私の疑問。

自分が持っている塩も、使い分けてるけどどれも気分なんですよね。塩を変えたことで、家族からも「今日はさすが、岩塩の味わいが効いてる!」という評価はない。

おいしいステーキと焼き魚のための、塩の適正量

でも、「塩の分量」は、少し変えただけでも料理の味が全然ちがってきます。特に焼き魚とステーキ。私が絶対おいしくなると思う塩の分量はこちらの通り。計量スプーンできっちり計ります(下の画像はイメージです)

ステーキに塩

●牛肉のステーキ…一人分(100g強)に小さじ1/3。肉の量が130gくらいまでに増えても、小さじ1/2だと多い。 <塩のふり方>焼く30分前に冷蔵庫から出して常温に戻し、焼く直前に両面にふる。こしょうも一緒にふる。

鮎の塩焼き

●焼き魚…一人分に小さじ1/2。「一人分」は、さけやさばなどの切り身なら一切れ、さんま・あじ・あゆなどは一尾。 <塩のふり方>焼く10〜15分前にふって全体になじませ、水分が出てきてもふかずにそのまま焼く。

天然物のあゆの塩焼き、家で作ったことありますか?

スーパーで出回ってもごく一時期で値段も高いですが、見つけたらこの塩の分量で一度おためしを!あゆは頭から丸ごと食べられる魚で、苦くてコクのある内臓が本当ーにおいしいです!

※追記:この記事を読んだ友人から、質問を受けたので追記します。 ●ひき肉料理(ハンバーグや肉だんごなど)…ひき肉150gに対し、塩小さじ1/4スタートで!

卵や玉ねぎのつなぎが入るので小さじ1/2でもいいかなと思いますが、濃厚なソースをかけたり、たれをつけて食べる場合も多いので、まず「たね」分は塩小さじ1/4で作って、薄かったら次回から増やしてください。

*塩を(分量的に)使いこなすと、料理は変わる*

この記事、日常的に使っている塩の話でパパッと書けると思っていたのに、なんども書き直して半日くらいかかってしまいました。

雪塩もふくめていい塩、もっと言うなら調味料全般を、値段の高い上質なものにすればそりゃいいけれど、毎日使うもので予算もあるし、それより味が激変する「塩の分量」について注目されないのはなんでだろう、という話でした。

調味料

私は酢や酒(料理酒)、みりんなんかも気ばって、高いものでそろえていた時期もありました。「具材を高価にするより、少量しか使わない調味料に投資」をキーワードに。でも調味料って意外とあっという間になくなるんですよねー。

決めないで、予算の枠内で具材や調味料をゆるゆると選んでいけばいいんじゃないかと。でも塩の分量は死守で!(笑)