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[書評]『フリーランス、40歳の壁ー自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?』を出版業界どっぷりの40代フリーランスが読んだ感想

フリーランス、40歳の壁

会社員は40代になると役職も上がり、仕事に脂が乗ってきますが、フリーランス、特にマスメディア業界で働いていると、40代は新たな壁にいろいろぶつかる、難しい時期になります。

今年4月に発売された『フリーランス、40歳の壁』は、その問題を丸ごと1冊にまとめた本。まさに40歳のフリーランスの立場で読み、いろいろ考えたので本の内容とともに紹介します。

ちなみに「フリーランス」の広義は、著述業のほか、弁護士・税理士・会計士など「士業」の人も含みますが、この本で言うフリーランスとは、ライター・漫画家・音楽家・映画関係者など「メディア上で表現する仕事をしている人全般」を指します。

『フリーランス、40歳の壁ー自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?』の簡単な内容

フリーランス、40歳の壁――自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?
竹熊 健太郎
ダイヤモンド社
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この本は、漫画原作者・編集者である竹熊健太郎氏さん(1960年生まれ)が21歳からフリーランスとして活動し、1980年代には『ビックコミックスピリッツ』でヒットも飛ばし、そしてぶつかった「40歳の壁」と、その乗り越え方について書いてあります。

フリーランス、40歳の壁

フリーランスには通勤がなく、また時間や人間関係には縛られないというメリットがある反面、取引先の確保(売上の安定化)や、お金と自分の健康管理、結婚・子育てなど(もちろん産休・育休などは出ない)、すべて自分一人で解決する能力が求められます。

20ー30代まではなんとか突っ走れても、40代に入ると、取引先の担当者(編集者)が自分より年下になることも多く、さらに難しい局面に入ります。竹熊さん自身の経験も踏まえて、フリーランスは40代以降どうやって「食っていけばいいのか」、深く切り込んで考察しています。

著者の竹熊氏(54歳)自身と、さらに5人のフリーランスの仕事変遷歴を紹介

竹熊さんの大ヒット作は、『サルでも描けるまんが教室』。

1990年代前半に大ヒット。これに関連したエッセイ執筆や、テレビ出演など依頼をひと通り受けたものの、40歳すぎ頃から仕事が段階的に激減。最後は貯金も尽きて財布に数千円しかなくなり、生活に困って消費者金融に手を出したり、警備員のアルバイトまで経験したそうです。

この本には竹熊さんご自身の経歴のほか、同じ著述業の、男性フリーランス5人のキャリアについて詳しくまとめています。みなさん、メディアでうまくいった時代(特に80〜90年代前半のバブル時代)を回顧しつつ、悩みながらチャンスを見つけて行った経緯を書いています。

本の中で、特に心に響いた(恐怖を抱いた?)箇所

渋谷の街

私は1970年代生まれで、竹熊さんよりもう少し後の世代です。しかし、「学生時代はインターネットがなくテレビと雑誌がほぼすべての情報源だった」のは同じで、現在の出版業界の変わりようには、なんとも言えないものを感じています。

何より、雑誌が大好きで、発売日を暗記して毎月何冊も雑誌を買っていた自分自身が、仕事以外では雑誌をほぼ見ず、ネットか、深く知りたいときは本でしか情報を取ってないのです。

竹熊さんは、バブル前夜から90年代までの「雑誌全盛期」に20-30代を過ごし、出版業界で働くフリーランスとして一番良い時代を享受したそうで…本の中の言葉がいろいろ身にしみました。

以下、抜粋します。

抜粋1:1980年代は誰でもライターになることができた?

ひとつには1980年代という「時代」の雰囲気が大きかったのではないかと思います。同世代なのでよくわかるのですが、私も杉森さん(注:本の中で紹介している別のフリーランス男性の例)も「趣味が仕事になってしまった」ところがあります。それが可能になったのが、1980年代という時代です。

あえて極論を言うなら、1980年代は、おもしろい文章さえ書ければ、誰でもライターになることができました。バブル時代は業界にかなりの余裕があって、企画の審査も甘かったのです。

抜粋2:マスメディアは「神々の黄昏」だった…

1960年代後半には、貸本屋が激減して出版・流通システムそのものが消滅してしまった。

(中略)

現在起こっていることは、マスコミを支えるシステムそのものの大激変であって、1960年代の貸本産業に起きたこととは規模が異なる。あのとき貸本産業に起きたことが、いまや出版を飛び越え、放送まで含めたマスコミ全体に起こっている。

おそらくインターネットをはじめとしたメディア環境の変化の結果が、いまのマスコミ全体に及んでいるのだ。これは産業革命や原水爆の発明に匹敵する不可逆的な歴史的変化なので、従来のシステムやパラダイムのことごとくは無効化してしまうのだと考えた方が良いと思う。

(中略)いま、われわれが目撃しているものは、マスメディアという「神々の黄昏」である。

著者の言いたいこと:紙からWebへの転換が必定、かつ唯一の救いの地?

紙からWebへ

そして、竹熊さんは多摩美術大学や他大の講師なども経て、44歳でブログを始めたところ、ブログが人気が出て、さらに自身の著書をブログ経由で販売し、ネットで安定した収益を得られることを発見。

現在は、著述業をしながら、ネットメディアを起こし(オンラインコミックマガジンの『電脳マヴォ』)、才能はあるがまだ世の中に埋もれている、新人漫画家の発掘を行って、ビジネス化されています。

そのことを、竹熊さんは「フリーランスの約束の地としてのインターネット」と表現されており、竹熊さんレベルには全然達していないものの、ここ10年近く同じことを考え続けていた私自身には深く響きました。

 

いかがでしたか?『フリーランス、40歳の壁』の本の内容を紹介しました。40代のフリーランスで同じ悩みを抱えている方は、一度読んでみてはいかがでしょうか?

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