フードライター浅野陽子の美食手帖

食の取材歴20年のフードライター(子育て中)がレシピ、レストラン、仕事話などを紹介するブログです。著書『フードライターになろう!』全国書店で発売中。

フランス料理とイタリア料理のテーブルマナーの基本、フードライターが徹底解説!

仕事やパーティー、結婚式などフォーマルな洋食を食べるとき、テーブルマナーに戸惑うことはありませんか?日本ではテーブルマナーをしっかり習う機会がありませんが、フォークとナイフの使い方、フレンチ・イタリアンでの正しい食べ方をフードライターがあらためて解説します!

日本では「箸の持ち方」にはやたらうるさいのに…

箸の持ち方

ミシュランガイドが日本に上陸して10年たち、フォークとナイフを使うフレンチ・イタリアン、その他西洋料理の店がこれだけ増えているのに、なぜか日本ではちゃんとマナーを習う機会がありません。

日本で「箸の持ち方」については親や周りから指摘されやすい。持てない人は「私、箸の持ち方はダメで…」と自覚しますが、フォークとナイフは習わない。社会人になって、正しいマナーを教えてくれる上司などに出会えればいいですが、なんとなく自己流でいまさら聞けない、という人も多いでしょう。

テレビでやるべきは「フィンガーボウルの水は飲まない」ではない

バラエティで、高級レストランでのマナーを紹介するときに、よく「フィンガーボウルの水は飲んじゃダメ」と取り上げていますが、フィンガーボウルが必要な料理自体が、そうそう日本では出ない。フォークとナイフだけだとどうしても食べられない料理は手を使ってもよく、そのときに指先を洗う水のボウルがフィンガーボウル。

「殻つきの大きな海老に濃厚ソースがかかっているメイン料理」なんかと一緒に出てきますが、老舗ホテルでの結婚式のフルコース以外に、私は日本で見たことがありません。海外でもほとんど見ない。

フィンガーボウル自体めずらしいから、出てきたら「これ、どうやって使うんですか?」と運んできたサービスマンに聞いて全然大丈夫。サービスマンは喜んで、丁寧に使い方を教えてくれます。バカにすることもありません。

そんな実用性の低いマナーより、私がよく見かける、これらのNGしぐさをぜひテレビで詳しく紹介して欲しいです。

知らない人が多いけれど、これ絶対やっちゃだめ!

パスタ

・パスタを「フォークとスプーン」で食べる

これね、やっている人が多すぎる…(涙目)個々のリクエストに対応するのが面倒くさいのか、高価格帯のイタリアンでもフォークとスプーンを一緒に出す店もあって、店側にも責任があるけれど…声を大にして言いたい。片手だと食べにくかろうが、トマトソースが飛び散りそうで心配だろうがなんだろうが・・・

パスタは「フォーク1本」で食べるもの!(`Д´)

これ、慣れないと怖いけれどやってみましょう!パスタプレートは大きいので、お皿の端で、麺を少量ずつ小分けにして巻きつけて、何度も口に運べばカンタンなのです。また、絶対すすらず「パクッ」と一回で口に入れるのも鉄則です。

日本では、丼やラーメンで箸とレンゲを両使いしますが、フレンチ・イタリアンでスプーンを使うのはスープのみ。シェフやサービスマンは、スプーンでパスタを食べる客を陰で笑っています。(だったら用意するな!とも言いたいですが)

・口の中に入っているものを、人に見せる

またテレビの話ですが、タレントさんが口に食べものが入っているときに大口を開け、それを映しているシーンが本当によく出てきて「ぎゃー!」といつも見ながら叫んでます。

せきやげっぷなど「食事中は生理現象をできるだけ人に見せない」のが西洋料理の基本で、しゃべりたいなら「いま食べているもの飲みこんでから」。問いかけられたときなど、どうしてもしゃべる必要があれば、片手で口をカバーし見えないようにして短く答えます。

長時間拘束されるフルコースで、会話もしなくちゃならないなか、気をつけるのは難しいですが…これも死守で!

・食事の途中でトイレに行く

男性でコースの途中で席を立つ人がいますが、トイレに行っていいタイミングは「乾杯前」か、「メインとデザートの間」の2回です。乾杯前に行けなかったら、トイレはメインを食べ終えるまでガマン。

メインのお皿が下がると「食後のお茶は?」と聞きに来るので、コーヒーかエスプレッソか紅茶かハーブティーか希望を伝えて席を立つ。デザートとお茶が運ばれるまでの間にすっと戻るとスマートです。

・食後に「カプチーノ」は頼まないで!

イタリアでは、食後のお茶にカプチーノは選択肢にありません。朝限定で飲むものだから。しかし、これも日本ではメニューにハイエンドのイタリアンでもときどき入れてるんですよねー…。そして「私はカプチーノで!」と頼む客を「この人知らないなー」と陰で笑ってます。

ここは日本だから関係ないと言わず、また店側のトラップにはハマらないでください(笑)逆に「イタリアでは朝しか飲まないのに…」とかボソッとつぶやくと「わかっている客」としてお店から一目置かれることもありますヽ(*´∀`)ノ

みんな知っているNGマナー

あとは、おなじみですがこれらは全部NGです。

・スープやパスタを「音を立ててすする」

・食器を持ち上げて、口をつけて飲む(アミューズで「器を持って、口をつけてそのままお召し上がりください」と言われる場合もたまにある。でもレストラン側から案内がある)

・ナイフ(右)、フォーク(左)を逆に持つ

でも挙げてみると、上の2つは和食では懐石料理のようなフォーマルな食事でも正しいマナーだし、いまの中高年でナイフやフォークをちゃんと学校や家で教わってきた人は少ないし、できない人がいてもしょうがないのかも…(*´Д`)

ナイフとフォークのみではどうしても食べにくい!ときのお助け技

ナイフとフォークだけじゃ、箸のようにつまめないし、細かい具材はすくえない!どうすりゃいいの?というときありますよね?お助け技、教えます!外食業界の関係者、料理雑誌の編集者はみんなやっていて、私もこの業界に入ってから習いました。

まず、こういう肉のグリルなどは、ナイフでひと口大に切ってフォークでぶすっと刺す。すぐできます。

(もっと細かい具材だったとして、)刺すことができない場合は、左手のままフォークを逆側に(フォークの背を皿につけて)持ち替え、ナイフでその食材をフォークの腹側に押し込んでのせ、フォークをそのまま口に運べばOKです!

たとえは悪いけど「ほうき(ナイフ)」で「ちりとり(フォーク)」にすくって、のせるようなイメージ?これだとタルタルソースでも、サラダにのっているナッツなどの細かいトッピングでも、なんでもフォークとナイフだけできれいに食べられます!

あと、意外とみんな知らないのはフォーク右手一本持ち。ナイフとフォークを両方持つとき右左は絶対固定ですが、切らなくても食べられるものは、ナイフを置き、右にフォーク一本だけを持って食べるのはマナー違反ではありません。

リゾット、ピラフなど米料理はフォークで食べましょう!(日本ではスプーンがセットされていることもありますが…)実はフォークの方が、大口を開けなくていいので女性はより美しく食べられるんですよ!

ちなみに私が小学生だった昭和の頃、「ライスはフォークの背にのせて食べましょう」と書いてある本を見た記憶があり…しかし、こんなことをやっている外国人は生まれてから見たことがありません(笑)誰が日本人に伝えたんだ?!

おまけ編・全然上品ではない「左手添え」

最後にどうしても言いたい!これもまたテレビの話なんですが、タレントさんが試食するとき、右手の箸で食べ物をつまみ、食べるときに左手をその下に添えているのをめちゃくちゃ見ますが…

それ、変だから!!ヽ(`Д´)ノ

手を添えると上品っぽくて、丁寧な印象になると思ってるのか…日本茶を飲むときは湯呑みを左手で支えますが、料理のときにやるのは明らかにおかしいのです!誰かがやって、なんとなくまねしているのかな。

*意外と書くことが盛りだくさんだった、テーブルマナーの話*

そんなに書くことないけど「パスタのスプーン食べNG」だけは言っておきたい、と思いついたこのテーマ。書き出したら3000字超えの長文になってしまいました。社会人は仕事で食べるシーンは多いので、覚えておいてください。

ちなみにナイフとフォークがずら〜っと並んだレストランでは、ビビらず「とにかく一品ごとに一番外側のペアから使っていけば OK」です!箸とちがって、(格式高い食事の場合)ナイフ&フォークは「料理一品ごとに1ペア」使い切るルールなのです。