食の取材歴19年のフードライター。食のトレンドや仕事メモを書いてます。イタリアンと魚が特に好き。

母を見送る。そのとき、家族ができること③(闘病・メンタルケア編)

■連日、先月亡くなった母の闘病について、役に立ったことを書いています。今日は闘病中役立った本のことについて。

■闘病生活は約5年間ありましたが、最初から最後までものすごく具合が悪かったわけではなく、最初の数年は「データ上の数字は動いているけれど、見た目はまったくふつうの人」という状態でした。しかし日が経つごとに、リアルな体調も悪化していきました。最後の1年は、体に痛みが出たり、吐き気が出たり、思うように歩けなくなり・・・と、目に見えて人生の終末期に近づいているのがわかりました。

■「終わりに近づいている」という未来を母本人、そして家族全員が気づきながら暮らすのは、本当につらいものでした。また、家族として最後を迎えるまでに、一体どんなことが起きてしまうだろうという不安でもいっぱいでした。そんなときに読み、救われたのが朝日新聞出版から出ているこの本(画像をクリックするとサイトに飛びます)。

■まさに最後は患者にどのようなことが起こり、家族はどう接すべきか、サポートしてあげるべきかという情報が淡々と書いてあります。つらいけれど、先に知っておくことで、ある程度覚悟も定まりました。しかし、何より役に立ったのが、この本にあった「ディグニティ・セラピー」です(本書のP245~。以下、一部本書より抜粋します)。

■「ディグニティー」とは英語で「尊厳」のこと。終末期の患者の、心理的な苦痛を軽減するための治療です。死期の近い患者さんに、人生を振り返ってもらうことで「あなたがやってきたこと、つながってきたものはすべて無駄なことはなく、未来永劫残されるもの」というメッセージに気づいてもらうという治療。自分の病気が治らないと知っても、それによって患者が尊厳を保てるのだそうです。

■治療、セラピーと言っても、質問を読んで答えてもらうだけなので、医療者でなくても、家族や、友人でも誰でもやってあげられます。問題は、明らかに「人生の最期」を見据えた質問なので、本人にどう切り出したらいいか悩むこと。私は、母が亡くなる1年ほど前、母自身がある日「家族の歴史を文章にしたい」と言い出し、その後しばらくほったらかしにしていたので「とりあえず、私が考えたこの質問に答えて、その内容を中心にまとめてみれば?」と提案しました。セラピーであることは、母に気づかれないように隠し通しました。

■P247に載っている、ディグニティー・セラピーの質問原文をそのまま抜粋します。

1.あなたの人生史で一番の思い出、もっとも重要だと考えていることを聞かせてください。
2.あなたができれば家族に知っておいてもらいたいなにか特別なことはありますか。
3.あなたか人生で果たしてきた役割のうちもっとも重要なものはなんですか。それらの役割の中で成し遂げたことはなんですか。
4.成し遂げたことの中でもっとも重要なこと、一番誇らしく思ったことはなんですか。
5.愛する人たちに言っておく必要があると思いながらもまだ言えていなかったことはありますか。
6.愛する人たちに向けてのあなたの希望や夢はなんですか。
7.人生から学んだことの中で他の人たちに伝えておきたいこと、あるいはアドバイス、導きの言葉はなんですか。
8.家族の将来に向けて役立つような、家族に残しておきたい言葉、あるいは教訓はありますか。
9.この半永久的な記録を作るに際して、他に追加しておきたいことがありますか。

■この質問に答えている間、母は非常に元気になり、その答えを聞くことで私自身も、とても救われました。母に質問しながらレコーダーで録音し、ワードファイルに起こしました。その後、この問答集のいくつかを短くまとめ、葬儀で「母の生前の姿をもっとよく表すラストメッセージ」として、参列者の方々の前で私が朗読させていただくことになったのですが、母にとっても、私たち残された家族にとっても、未来永劫残る宝物のような記録になりました。
いま、私と同じような状況で、家族としてつらい時期を過ごしている方に、ぜひおすすめしたいです。

明日は葬儀のセレモニーで役に立ったことを書きます。

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