フードライター浅野陽子の美食手帖

食の取材歴20年のフードライター(子育て中)がレシピ、レストラン、仕事話などを紹介するブログです。著書『フードライターになろう!』全国書店で発売中。

フードライターになるには?食の取材歴20年の現役フードライターが徹底解説します


「フードライターってどうやったらなれるの?」とよく聞かれます。

いろいろなルートがありますが、私自身の経験と、令和時代の最新のフードライターデビューの形をご紹介します。

 

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フードライターの仕事、原稿料などについてガッチリ書いています。

フードライターの仕事とは?食の取材歴20年の現役フードライターが徹底解説します

フードライターに資格・学歴は不要、専門学校に行く必要もなし

名刺

フードライターだけでなく、ファッションライターや美容ライターなどすべての職業ライターに共通しますが、

まずフードライター(フードジャーナリスト含む)になるための資格は要りません。学歴も必要ありません。

「職業はフードライターです」と誰でも、いつでも名刺を作って名乗ることができます。

ただしそれは「自称」フードライターの域を出ません。
そして自称の段階では、出版社には使ってもらえません。
「自称」を脱して「プロ」になるにはどうするか……

それは、ライターデビューすることです。

デビューとは、自分の原稿に公的な媒体から1回でも「原稿料」が支払われること。

そうしたら立派なプロであり、自他とともにフードライターになったと言えます。

1本目の仕事をもらうまでがしんどい

1本目しかし、昭和の時代から「プロとしてまず1本目の仕事を獲る」ことがフリーランスの最初の、最も難しい関門でした。

1本目の仕事を獲るまでの道のりに、正解や王道はありません。

私の周りにはファッションやITなどライター仲間が多数います。
が、みんなそれぞれ今に至るまでのルートは違います。

昭和・平成で一番多かったパターンが
「大学卒業後、新卒で出版社(または編集プロダクション)に入社→独立、元の職場から1本目をもらう」でした。

私も新卒で出版社に入社し、別の出版社に転職してからフリーになっています。
この場合、出版社が大手か中小かを問いません。

編集プロダクション(出版社の下請け会社)でもよく、アルバイトや社員でもとにかく出版業界にもぐり込むことが大事だったのです。

また新卒では別の業界に就職したものの、転職して中途入社で出版社に入る、というパターンもありました。

しかし出版社を辞めてもそこから仕事発注を受けられる保証はなく、「1本目をもらうまでがしんどい」とみんな言っていました。

昔からライターを続けている人は「たまたま、仕事を頼まれたことがきっかけ」と口にします。

私もそうでした。辞めて2年間は実は専業主婦をやっていたのですが、2年後、元の上司が「君が昔担当していた媒体を、外注で書いてくれないか」と声をかけてくれたのが始まりでした。

フードライターや他のジャンルでも、ライターになるにはこんな偶然性に頼らなければいけないのか?となりますが、令和時代の今では変わっています。

令和時代のフードライターへのキャリアパス

平成令和 令和時代の今も、出版業界に足を踏み入れるチャンスがあれば、それが一番近道だとは思います。

ただネット検索や企業側が発信することが当たり前になっている令和2年の現在、紙媒体は減る一方でライターの需要は激増しています

「フードライター 募集」と検索をかけるだけでも入り口はいろいろ出てきます。
だいたい「応募資格はライター経験者に限る」とありますが、「未経験でもOK」の条件も結構見つかります(女性メディアに多い)。

ランサーズやクラウドワークスといった、「『仕事をしたい人』と『仕事を発注したい人(企業)』をお見合いさせる仕事版マッチングサイト」に登録する手もあります。

または派遣社員のサイトに登録し、派遣先を出版社に限定して、派遣から出版業界に入るルートもあります。

すべて私自身がライターデビューした頃には考えられなかったことです。

「ラッキー」や「棚ぼた」によるデビューチャンスしかなかった昔より、チャンスは格段に広がっているのではないでしょうか。

良い情報、良い編集部を探し当てるための「検索力」を付けることが大事ですが。

1本目のデビュー後、フードライターに「なり続ける」には

銀座コリドー街 舌舌 タンタン もも焼き どて煮(昨年2019年、銀座のおでん特集で自分で撮影したもの)

そしてめでたくフードライターデビューできた後10年、20年にわたって「仕事の依頼が続くように頑張る」のが大事です。

連載を定期的に書かせてもらっていても、
担当デスクの異動やそのメディア自体の休刊など、
さまざまな要因でその仕事がある日突然、ブツっと途切れることはよくあります。


そのため、複数の仕事を同時に走らせ、チャンスがあれば自分を売り込みに行くことは常に続けなくてはいけません。

私のフードライターデビューして最初の10年間(2005年〜2015年)は、こんな感じでした。

・退社して専業主婦になって2年後、1本目の仕事を元の職場(出版社)からもらう(2005年からブログもスタート)

・さらにその1年後、元の出版社関係のつながりで、料理専門系出版社から2社から仕事をもらう→その2社から継続的に依頼されるようになる

・元の職場+次の2社の実績が少したまった段階で、自分の記事のポートフォリオ(書いた記事をカラーコピーしてクリアファイルにまとめたもの)を持って、新しい出版社に売り込みに行く

・売り込みに行った先から仕事をもらう(「けんもほろろ」状態の編集部もたくさんありました涙)

・さらに別の出版社に売り込みに行く

【この間、ずーっとブログを書き続け、自分がやった仕事はブログにアップする】←当時は自覚してなかったのですが、これがすごく大事でした!

この話をすると「どうやって新しい出版社に売り込みするの?」とよく聞かれます。
2010年頃までは、雑誌の裏表紙に必ず「編集部 03-XXXX……」と電話番号が書いてあったのです。

とてもベタですが、 ここに電話をして「フードライターをやっていますが、売り込みに行きたいです」とアポ取りして会いに行く、というシンプルな作業をやっていました。

これを本当に、何十社繰り返したかわかりません。
持ち込んだファイルの記事を読んで発注してくれた編集者もいました。
しかし門前払いされたり、
当時は子供がいなかったので「夫婦二人で家族を形成していない人が、食やレシピの記事を書けるの?」という言葉を言われたり(by 超有名レシピ雑誌の女性編集長!)
あり得ない対応をされたことも何度もありました……。

現在ではブログが勝手に営業してくれるように

ブログ執筆 そして2005年から書き続けているブログが功を奏し、5年後、2010年くらいからブログ経由でいろんな仕事のお声がけをいただけるようになりました。
2013年から勇気を出してブログに「顔と実名出し」も決行。
顔出ししてからは、名の知られた会社からの依頼が増えました。
何度も書いていますが、今まで8回出演したテレビ番組も、すべてブログ経由です。

そしてブログで仕事をもらえるようになった時期から、逆に売り込みで新規の仕事をもらえることはなくなりました。

売り込んでも「もうフードライターさんはうちでは足りている」と言われるばかり。

一方で、「どうしても浅野さんに書いてほしい」というありがたい新規ご依頼(大手新聞社、大手食品メーカーからの大型案件も)もあります。

つまり出版業界の仕事は、
昭和平成のような「人対人の泥くさい偶然の出会い」ではなく
「最初からニーズが合致している者同士の、スムーズなマッチング」
から始まるようになったのです。

フードライターではなく、インフルエンサーを目指す手もある

というわけでフードライターになる方法は、
ひと昔前より令和の今の方がずっと広がっています。

また食についての発信をしたいなら、
フードライターでなく昭和・平成になかった職業「インフルエンサー」になるという道もあります。

インフルエンサーとは、
メディアから発信を依頼されるのではなく
「自分自身がメディア(オウンドメディア)」になって
SNSやブログ、YouTubeから情報を発信していく仕事です。

得意なレシピ、お気に入りのレストラン、ごほうびスイーツ、映画やドラマで見たおいしそうな料理の感想など……
食に関する情報は無限にあり、ネタが尽きることはないです。

これも、自由度が高くいいなと思います。

強大なインフルエンサーになれば、メディアから「これに書いて」「これに出て」「コラボして」と依頼を受けることになるでしょう。

他業界から来た有名な食インフルエンサーは、ざっと挙げるだけでもこんなにいます。

たとえば、

厳選70軒 最強のデブリシャス - 年間1000軒を食べ歩いて見つけた本当の名店 -

電通のクリエイターをしながら食べ歩きブログがバズったフォーリンデブはっしーさん(現在は独立して食のプロデューサーになられたよう)、

生まれた時からアルデンテ

同じく平野紗季子さん、

【[裏メニュー]パスポート&うどんが主食シール付き】うどんが主食 私が通うウマい店100+80

食べログのトップレビュアー「うどんが主食」さん(レストランガイドまで出版)など。

 

そしてフードブロガーにも有名なインフルエンサーは多数います。

 

料理誌の編集者やフードライターよりよっぽど膨大な美食体験数があるのではと思う、ブロガーのタケマシュランさん、

www.takemachelin.com

カレーとおそらくタイ料理に限定した食べ歩きブログを20年以上毎日更新。
業界の有名人、エスニカンさん、

blog.livedoor.jp

「京都とパリの食」をご自身のサイトで発信し続けている関谷江里さん

www.erisekiya.com


発信とそれを継続し続ける力があれば、誰にでも食について発信できるチャンスはあるのです。

いかがでしたか。
「フードライターになるには?食の取材歴20年の現役フードライターが徹底解説」でした。

参考になれば幸いです。


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asanoyoko.com