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沖縄取材の裏話・番外篇は「琉球泡盛」の酒造所での話
食限定の取材歴20年、仕事で沖縄に行ってきたフードライターの浅野陽子です。
「沖縄の酒」といえば泡盛(あわもり)。しかし「沖縄のアルコール度数の高い酒」ということ以外、あまり知られていないのでは。
今回は沖縄・瀬良垣島取材の裏話(前篇・後篇)の番外篇として、恩納酒造所(おんなしゅぞうしょ)を取材した時のことを紹介します。
ちなみに沖縄取材後、メディアに執筆したのはこちらの日経の記事▼▼
[コラム連載]『NIKKEI STYLE』(日経電子版)で記事「高級珍味ウミヘビに驚くも、堪能 琉球王朝の宮廷料理」を書きました
ルーツは中国?タイ?謎も多い日本最古の焼酎・琉球泡盛
那覇空港から車で約1時間、沖縄本島中部・恩納村の観光名所「万座毛(まんざもう)」の近くにある恩納酒造所。1949(昭和24)年創業、村で最も古くから琉球泡盛造りをおこなっています。
沖縄の琉球泡盛(以下「泡盛」)は焼酎の一種です。「焼酎」とは醸造の工程で、アルコール分だけを蒸留し(専用の機械で加熱し、取り出し)て造るお酒のこと。
焼酎の原料には米・いも・黒糖・麦などがあり、泡盛の原料は米です。
私は10年以上前にワインエキスパート資格の受験勉強で、「琉球泡盛は15世紀半ばに日本に定着した、焼酎の元祖」と習いました。しかし、泡盛のルーツは「タイから中国を経由した説」や朝鮮半島経由説など諸説あり、伝来した時期も正確にはわかっていないとのこと。
原料は日本のコメでなく、細長い「タイ米(インディカ米)」。これに沖縄県産の米麹(黒麹/くろこうじ)菌と地元の湧き水を使います。
蒸したタイ米に黒麹菌、水、酵母菌をまぜて2~3週間発酵。“黒”麹菌なので発酵途中の色も真っ黒です。それを加熱して専用機械で蒸留します。最後に巨大なタンク(記事の一枚目の画像)でさらに熟成させます。
ちなみによく聞く「古酒(くーすー)」とは、3年以上熟成させた泡盛のこと(出典:「琉球泡盛 古酒とは」沖縄県酒造組合ウェブサイト)。
完成した泡盛は水で割り、アルコール度数を(商品ごとに)20~45度に調整してボトル(またはカメ)詰めし、出荷されます。
出荷前には不純物が入っていないか、一本ずつ光を当てて、目視で確認。
今回は取材チーム20人ほどで、酒造所内でこれらの製造工程を見せていただきました。
黒麹菌は雑菌に強いため日本酒の工程と少し異なり、泡盛は適切な温度管理をすれば暖かい沖縄でも年間を通して生産が可能とのこと。
日本の酒なのにタイ米から造る、という不思議な泡盛。食材が発酵する工程を間近に見られたのも楽しかったです。
沖縄の各家庭で大事にされてきた、泡盛の楽しみ方「仕次(しつ)ぎ」
酒造所ではボトルでたくさんの商品を販売しています。すぐに飲んでもよいのですが沖縄の各家庭では「仕次(しつ)ぎ」と呼ばれる、地元ならではの方法で10年、20年とじっくり熟成させながら少しずつ飲むものなのだそう。
「仕次(しつ)ぎ」とは、こうした専用のカメ(甕/かーみ)に入った泡盛から全体の1割を取り出して飲み、さらに熟成年数の若い泡盛をもう1種入手してきて、そこから取り出した分を古い泡盛のカメに注ぎ足します。
これを1年に1回ずつ繰り返し、数十年単位で「その家の泡盛の味」を作り出して、出産や入学祝い、成人式、結婚式などの際、家庭で開けて楽しみます。
佐渡山さんいわく、仕次ぎによってバニラやメープルシロップのような豊かな風味が出てくるとのこと。国税庁のウェブサイトにも記載がありました。
貯蔵年数の長い古酒の一部を使用した際、貯蔵年数の短い古酒等を補填して、仕次古酒の品質を維持又は向上させます。この方法は、我が国においては唯一泡盛のみで実施されています。(出典:「泡盛の仕次について」)
沖縄県内にはそれぞれの村に泡盛を造る酒造所があります。恩納村では、こちらの恩納酒造所が伝統手法を守りながら、最も古くから酒造りをおこなってきたそう。
こうした酒造りや地元ならではの楽しみ方を聞くと、昔の人の知恵や工夫、日本の食文化の深さを知って、感銘を受けます。
泡盛にこんな歴史があること、日本人だけでなく世界の人に知ってほしいと思います。
コロナ禍から現在までは酒造所内の一般公開はお休み中で、今回は取材のため、特別に見学させていただきました。今後、再開する可能性もあるとのことで、興味がある方は直接問い合わせを。
恩納酒造所
それでは、今日も最高においしい1日を!
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