フードライター浅野陽子の美食手帖

食の取材歴20年のフードライター(子育て中)がレシピ、レストラン、仕事話などを紹介するブログです。著書『フードライターになろう!』全国書店で発売中。

日本橋の大人気魚料理店「川治」と、フードライターの行く末

「好きなジャンルは魚とイタリアン」と書きながら、魚の記事がおそろしく少ないことに気づきました。みなさん知りたいのは、「おいしい魚を食べられる店情報」。

今回は、そのキーワード通りのお店です。しかも安い。だから激混みですが……。

11時15分に行ったら最後の1席という人気ぶり

アップが遅くなり、まだ肌寒かった時期に行ったときの記録です。最近は夜にほとんど出歩けないのでランチ訪問。

開店15分前の11時15分に到着。店の前に行列がないので「やった!一番のり!」と思ったらお店がもう開いている。「どうぞ〜」と声をかけられ入店。私が最後の一席だったようで。すでに満席です。

何をしているかというと、みなさん、店内で11時半の営業開始を待っているんですねー。すごい人気だ。

ブリの刺身盛り定食810円。安い!なのにすっごいボリューム

昼のメニューは、季節の魚を使った ・刺身盛り ・煮付け ・干物 ・バターソテー。どれも810円。 (・小刺し 200円)←定食にプラスできる刺身。

すっごい迷ったけど、脂ののったブリが大好きなので「天然ブリ刺し」にしました。

それで来たのがこれよ!刺身が分厚くてすごいボリューム。ごはんが普通盛りでも山盛り(それでもかなり減らしてもらいました) これにぬか漬け(きゅうりと大根)と味噌汁がついて810円。

周りを見ると、他のメニューも同じくらいの大ボリューム。それでさらに小刺し追加したら、食べ盛りの少年でも、はち切れそうな量です。

男性脳と女性脳のちがい

刺身は本当においしい。脂の濃厚さだけでなく、ブリの肉の味わい、旨味をちゃんと感じるのです。

この味とボリュームで810円。お腹(と財布を)空かせた男性は、泣いて喜びそう。ひとり暮らしで、こうした家庭料理っぽい味に飢えていたら、本当に心に響くんだろうと。

ただ、18席しかないので相席が基本。隣の知らない人と、ひじがぶつかるほどの凝縮感で、荷物を置く場所はほぼなし。

接客は、忙しくてちょっと声を荒げちゃう大将と、ゆったり優しく、注文をまちがえちゃったりするお母さんとのかけ合いが常に聞こえてきます。

「ムダ話せず、できるだけ早く食べて出なきゃ待ってる人に悪い」という空気がある。私が行ったとき、女性2人連れが一組だけいて、あとは全員男性でしたが、その女性たちを含め、みんな下を向いてかき込むように猛スピードで食べていました。

男性は、魚のクオリティと量と安さに目が行って気にならないだろうけど、女性同士が「ランチを楽しむ」という目的で行くと、この雰囲気はちょっとつらい。

夜のメニューも食べて、もう少し急がないでいい夜の雰囲気も見たいけれど、予約は1年先までいっぱいとのこと。ネットでレビューを書いているのもほとんど男性なので、やっぱり男性を強く引き付ける要素があるんですね。

11時台早々が確実

いろいろ思いをめぐらせながら、食べ終えて外に出ると長蛇の列。でも時計を見たら、この時点でまだ11:50なのです!すごい人気だ。

一巡めを逃したら、30〜40分は待たなきゃいけない。確実に入りたいなら11時すぎには来たいところだけど、会社勤めの方はちょっと難しい?

*飲食業界とフードライター、どちらも岐路に立たされている*

最近、取材や打ち合わせが重なって日本橋界隈をよく歩いています。

私が見た、ここ2〜3年の日本橋は飲食店の競争が激化!ネットで高評価のお店は、この「川治」さんもそうだけど11時台早々に行列ができはじめ、人気がないお店はピークタイムでもまったく人けがないのです。差がはっきりわかるので、商売ってシビアだなと。

あきらめて人けがないお店に入ると、たしかにその通りで…このブログで紹介したいほどの満足度が得られない。

ネットの評判とリアルが、かけ離れていないのです。5年前、10年前と比べてかなりリンクしているんですね。客単価が低いお店ほど、その傾向にある。

つまり、一般のお客さんのレビューが、昔から「評判のお店」を雑誌やその他、紙メディアで紹介していた、プロのフードライターと同じ仕事をしている。それって飲食店だけじゃなくて、私たちも商売やばいよね?と、日々焦っては街に出るようにしてます。

****************** 大衆料理 川治 カテゴリ:魚介料理・居酒屋 人形町駅浜町駅 徒歩6分 03-3666-1100 東京都中央区日本橋浜町2-8-5 営業:11:30~13:00/18:00〜23:00 定休日:土日祝 ******************