フードライター浅野陽子の美食の便利帖

食の取材歴20年のフードライターです

母を見送る。そのとき、家族ができること①(闘病・食事編)

■先月半ば、最愛の母を亡くしました。私の仕事や、日々やっていることを自分のことのようにいつも楽しみにして、応援してくれていた母。

■母は60代前半、私はいま30代後半。一般的に、親を失うにはなんら不思議のない年齢ではありますが、やはり親は、父も母も、自分にとってはただ一人。「なんでうちだけこんなに早いの」「あと10年、いや5年は一緒にいたかった」という思いがつのります。でも、それも運命なのでしょう。クリスチャンだった母は、かなり早い段階から、その運命を受け入れていました。私もそうすることにします。

■今回、母は5年間の闘病を経て、亡くなりました。その間、一番近い家族として、できることは何だろう、と私自身考え続けた5年間でもありました。ネットがある現代ならではできたこともたくさんあり、私のブログの読者の方にも、(できれば役に立つ日が来ないことを祈りつつ)、紹介したいと思います。

まず食事。母は通院で、抗がん剤治療を数年にわたり続けていました。気力や食欲はもちろん通常より下がるのですが、何かは食べなくてはいけません。そして矛盾するのですが、食べることが唯一の、生活の中での目新しい部分、楽しみでもあります。

■私も食が専門ということもあり、何十、何百食作ったかわからないほどせっせと実家で作ったり、持って行ったりしました。しかし難しいのは抗がん剤中の食欲が、普通の人が想像できない嗜好に偏ること。たとえばさっぱりしたちらし寿司、などはわかりやすいですが、「白いご飯に焼き魚と味噌汁」は気持ち悪くて食べられないと言う。一方、こってりしたものがNGかと思うと、ビーフカレーソース焼きそば喜んで食べてくれて驚いたり、「生温かくて気持ち悪いのでは?」と想像する茶わん蒸しも好きだったり…連日、試行錯誤でした。

■そんな中でとても役に立ったのが、アマゾンなどでさんざん検索し、行きついたこの本。女子栄養大学出版部から出ています(画像をクリックするとサイトに飛びます)。胃の不快感や味覚の変化など、症状別に、具体的な料理例がレシピ付きで載っていて、本当に役に立ちました。

■料理は「ぶり照り」や「スパゲッティナポリタン」など日本の普通のおかずが多いので、このガイドを参考にして、それぞれの家のオリジナルレシピでも十分対応できます。

■家族は、患者が食欲がないと悲しくなり、逆にたくさん食べてくれると嬉しくて、つい「いっぱい食べないと元気になれないよ」と体育会的に(?)強要してしまうのですが、本人にとっては非常に苦痛なもの。かといって何だったら食べやすいのか、自分におきかえても感覚でわからないので、こうして栄養のプロが、家族の体育会ノリではなく、科学的に教えてくれる本はとてもありがたかったのです。

明日も、また続きを書きます。明日は生活編です。