フードライター浅野陽子の美食手帖

食の取材歴20年のフードライター(子育て中)がレシピ、レストラン、仕事話などを紹介するブログです。著書『フードライターになろう!』全国書店で発売中。

たらといかの唐揚げ千切り野菜の甘酢あんかけ/あわや入院の危機回避

ある日の夕食。
・たらといかのから揚げ、千切り野菜の甘酢あんかけ
・わかめとえのき、きゅうりの酢の物 ・あさりの味噌汁(薬味は三つ葉
・ごはん

たらの切り身とおろしたいかに、 片栗粉と小麦粉を1:1でまぶして揚げる。 ピーマン、にんじん、玉ねぎ、たけのこを千切りにして煮た中華風甘酢をとろりとかけて出来上がり。
アツアツのあんかけが、カリッとした魚介の から揚げになじみ、とてもおいしい!

…と、おとといまではこんな夕食を作って、おいしく食べるくらいまったく普通に元気だったのだ。
しかし、昨日。 日中は、大学時代一緒にアメリカに短期留学した後輩Kちゃんと ランチをし、別の用事も済ませて、何事もなく夕方帰宅。その後時間が経つにつれ、頭の表皮の左半分だけがピリピリと痛みを感じてきた。
それも全部ではなく、ところどころ。首の後ろも左半分だけ、部分的に痛い。
「いやだなー、ヘンなところに吹き出物でもできたのかな?」と 鏡を二重に持ってのぞくが、髪の毛でまったく見えない。 痛さが強くなってきたので、保冷材に ビニールとタオルをかけて当ててみた。 しかし、全然収まらない。

あいにく夫は不在。 少し怖くなって、いつもお世話になっている大学病院の夜間救急部に 電話をし、皮膚科につないでもらって症状を話すと、なんと!
「実際に拝見しないとわかりませんが…『左半分』という 症状からすると、帯状疱疹を発症している可能性が高いですね」 ええ!よく聞く「帯状疱疹」だが、私に?…もしそうだとしたら、どうすればいいんですか?と慌てて聞く。

「最悪の場合は、来ていただいてそのまま一週間の入院になります。 ただそれは皮膚科の場合で、脳や内科の別の病気の疑いも ありますね」
ありがたいが、容赦なく続く非情な言葉に、クラクラした。しかも 「帯状疱疹にしても、あなたの場合は頭部や顔の神経が集中しているところなので とにかく早く受診方がいい。ウィルスが神経の障害を残すこともありますから」 と、さらにダメ押しのひと言。
夫の帰宅を待って、彼に頭を見てもらってから病院に行こうと思った。 しかし鏡を見たら、電話する前にはなかった赤いプツプツした疱疹が アゴにも出ている!
ああ、これは帯状疱疹に違いないと直感。

そのまま荷物をまとめ、病院へ直行。何も準備してない状態から、いきなり一週間分の入院の用意をするというのは かなりパニックになる。 しかも来週半ばには、N新聞でのこれから半年間の週1コラム連載が始まるのだ。 化粧品や寝具も持ちつつ、まとめておいた仕事用の資料も入れ、メールできない場合はパソコンで書いたものをCDに焼いて郵送で入稿しようと 予備のCD-Rなども詰め込む。

あーあ、旅行や出張の準備とやることは変わらないものの、 「入院支度」とはなんと後ろ向きで暗い作業なのだろう…帰宅ラッシュも終わったガラガラのJRに乗る。
途中で新宿の靖国通りのネオンが見えてきた。 「ついさっきまで、私はいつでもそこに行く自由があったのに、 もしかしたらこのまま、しばらくは戻れないかもしれない」と、ネオンを見ながらうっすら涙が。

病院には夫も駆けつけてくれ、 二人で一緒に診てもらうと、診断はやはり帯状疱疹
帯状疱疹とは、子供の「水ぼうそう」と同じウィルスが ずーっと体内のどこかに住んでいて、大人でも疲れやストレスがたまるとそのスキに表面に出てくる病気なんだと。
体の右・左どちらか半分にぶつぶつ、ジクジクしたものが出てくるのが特徴。 痛みは海で強い日焼けをした後腫れ上がってしまったときや、 大きめのニキビが複数出たときに似ている。ぴりぴりして、嫌な痛さだ。

しかし、本当に「突然」の発症だった。 あえて言うなら、三日前くらいから左肩だけやけに張るなぁと思っていたくらい。それを伝えると、「ああ、やっぱり。神経はつながっていますから」と。しかしあの時点から、疱疹発生までの予測はとてもできない。

診てもらったのが早かったので とりあえず内服薬と痛み止めをもらい、翌朝とさらに一週間後に 外来でも診てもらうことで事なきを得た。 この一週間は、とにかく集中して「休む」ことが大事だと先生に言われる。

入院はない、ということでホッとしたけど…10月からはがんばって、さらに仕事を増やして行きたいと 思っていたところだったが、今回のことで反省。
フリーランスは「体調管理も仕事のうち」というが、 自分で「来月ひと月は絶対カゼをひかない」などという 管理は、やはり自然現象なので100%実践することは難しい。

結局、常に一定のレベルの原稿(仕事)を、自分のこなせる量のみ 確実に出し続けていくことが最も大切なのだ。 頭では書けても、自分の体力の範囲内でこなせないのは、 それも結果的に自分の実力のうち…悲しいが、それが現実。 「自分の適量」をわきまえなければ、と改めて実感した出来事でした。

ちなみに帯状疱疹ウィルスは、誰の体にも必ずいるそう。皆様も、オーバーワーク&過度のストレスにご注意くださいませ。