フードライター浅野陽子の美食手帖

食の取材歴20年のフードライター(子育て中)がレシピ、レストラン、仕事話などを紹介するブログです。著書『フードライターになろう!』全国書店で発売中。

「フードコーディネーター検定2級」合格までの長い道のり

今日、通知が来た。 2級に受かっていた。
やったー!!!やったよー。嬉しい。うう。感動だ。 実は、去年1回落ちた。
3級はマークシートの1回のみだが、2級はマークシート1次+自由筆記2次の2回に分かれる。 1級はまだ設置されていない。数年後にできるそう。

3級は、フードコーディネーター協会の開催する試験対策セミナーに出れば、 「ここが出ますよ(といってもかなり広い)」と、テキストの範囲を教えてもらえる。そこをひたすら覚える。
3級に受かると、2級を受けられる。
しかし、2級はどこが出るのかまったく教えてもらえない。過去に何が出たのかちょこっと教えてもらえる程度で、あとは300ページくらいのテキストを丸覚えする。
内容はレストランの経営(数字的なもの)、栄養素、外食業に関わる人のホスピタリティーと責任とは何ぞやとか、メディア&広告代理店への対応術などなど。結構専門的。

しかもテキストにはない時事問題も出る。私が2級を初めて受験した去年は、米国産牛肉の問題やロハス、話題のマクロビオテック(玄米菜食主義)などが熱いテーマだったので、それに関する問題も出た。

1次が受かると2次に進める。これは自由筆記。 しかし去年の初受験時、正直私はこの時点でかなりナメていた。 1次で結構勉強したし、新聞もかなり集中して読んだし…しかも当時はシンガポールのプレス視察ツアーから帰国直後。
現地でかなり進んだ飲食業界のオペレーションのレストランをいやというほど見学したので、「どんな問題を出されても『アジアンフード』にふっときゃいいだろ」くらいの甘い考えでいた。

だが当日…問題用紙を見て頭が真っ白になる。
あなたは、漁港のある地方都市で、繁盛レストランを1軒プロデュースし、東京のマスコミ向けに大々的にプロモーションすることになりました。その企画書を丸ごと書け」みたいな問題。
しかも「その地方都市は具体的にどこか、都市名もきちんと設定せよ」とな。

漁港??地方都市?…設定からまるで思いつかず、2時間あるうちの25分くらいは 解答用紙は真っ白、握った鉛筆は汗で濡れるばかり(笑)。意味不明なことを書いて終わった。結果は惨敗…

そして今年。1次合格者は、2次受験資格を何年でもキープできる。 もう1回受けても受かるかまったく自信なかったが、とりあえず申し込んだ。 そしてラスト1ヶ月に入って、ようやく準備勉強をし始める。
準備といっても、今年も何が出るのか、さっぱりわからない。過去問もオープンになっていない。 とりあえず、去年できなかったことを今年は理解しておこう、と自分が行ったことのある国内の道府県の特産物をチェックした。私は地方ネタにどうも弱い。

さらに、夫が夕飯が要らないという日は近所のファミレスで場所を変えてひたすら食べまくり、 デジカメでこっそり撮影してメニューのイラストに起こし、売価からコストを自分なりに出してみた。ファミレスのメニューも結構書き写して研究した。奇妙な客だったと思う。
でも、やっぱり自分でお金を出して、現場を研究すると面白い。ファミレスは今、世の中でブームになっている食材は、たいていチェックして即、売っている。たとえば、雑穀ブームになったら、すかさずメニューとセットにできるライスを「恵の五穀米」も選択可能にするとか。非常に勉強になった。

そして、当日。 出た問題は例のごとくまた地方ネタ。
「あなたはある地方都市の、幹線道路ぞいのイタリアンレストランをリニューアルする責任者になりました。今ある人気メニューは〇〇と××なので(列記)、 これとコンセプトがブレないように、①新しく掘り起こしたい顧客層/その理由 /②その人たちに向けて提案したい新メニュー(コースで、前菜からデザートまで)/③売価 ・原価 ・オペレーションの方法(「お食後に、今が旬のかぼちゃのムースをいかがですか?」とホール担当にすすめてもらう、とか)/④新メニューのうちの1品の材料&作り方レシピ(分量のグラム表記は不要)/⑤その1品の盛り付け例(イラストで。絵のヘタうまは関係なし)/⑥もちろん、その地方都市の具体的地名も書きなさい」 みたいな問題だった。

イタリアン!きたよー。私の得意分野だよ! しかもイタリアンには何人か知り合いのシェフがいる。そのシェフたちの顔を 思い浮かべて、あのシェフにお願いしたら、どんなメニューを作ってもらえるだろうか…とか、想像しながら書いた。
ターゲット層のイメージは、「地方の40-50代ちょいワルおやじ&そのセレブ風妻」にした。(ちょいワルとは書かないけど)

そして2時間目。また自由筆記。問題は「以下の4つから1つ選んで自由に書け」。
①1時間目で書いたことの、数字的証明 (売上予測、宣伝費・材料費などかかるコスト全部の列記と分析、損益分岐を計算)
②1時間目で書いたことと、まったく別パターンをもう一つ、同じ形式で書き直す
③自分が好きなテーマで、1時間目のレストランに関する儲かる企画を1本考え、 オーナーに数字ごと提案せよ
④(忘れた)

①と③はわたしにとっては短時間で解くには難易度が高過ぎる問題。④もそうだったと思う。 なので、②を選ぶしかない。
しかし1時間目でもいっぱいいっぱいだったのに、もう1パターンかい! 頭と体に残っている力を絞りきるようにして書く。
なんとか考えたのは、1時間目の「DINKSちょいワル」系に対して、今度は家族愛いっぱいの 「好き嫌いの多い子供が食いつくようなメニュー」を増やして、その親&祖父母ごとファンとして囲い込み、週末ごとにファミリーで必ず通ってもらえるようなコンセプトの店にする。

さらに「食の知識をスタッフが共有して、店で家庭ができない『食育』体験ができる」というような内容にした。 制限時間を目一杯使ったが、最後まで終わらなかった。 一応30分過ぎたら出てもいいのだが、とてもそんな余裕はない。 結構途中で帰っている人も多かった。

よく終わるなあと感心しながら、ひたすら書き、燃え尽きた。疲れた。こういう場で周りの人とは関わりたくない方だけど放心していた私に、隣の席のおばさまが「疲れましたね」と声をかけてくれ、 思わず一体感を覚えて、最寄駅まで一緒に帰ってしまった。

そんなわけで、合格を知った今日の喜びはひとしお。誰でも受験可能なので、興味ある方は日本フードコーディネーター協会のHPを チェックしてみてください。