フードライター浅野陽子の美食手帖

“食べることがもっと楽しくなる”をお届けします(火木土に更新)。 食の取材歴25年のフードライター浅野陽子がレシピから名店レストラン、旅グルメや取材の裏話までつづるブログ。 著書『フードライターになろう!』発売中

【読書評】 フードライター仰天!1986年の『BRUTUS(グルメ特集号)』が衝撃すぎた

食限定の取材歴25年、フードライターの浅野陽子です。

今日は土曜日なので本の話を書きます。神保町の古本屋街で見つけた『BRUTAS』の1986年3月(40年前!)発行のグルメ特集号がいろいろ衝撃的だったのでそれを書きます。

神保町での奇跡?

東京一の古本屋街で本好きな誰でも知っている神保町の古本屋街。今では手に入らない食の本も結構あるのでときどきのぞきます。

おしゃれなファッション・インテリア雑誌の昭和版や海外の雑誌も扱う

今回はこの「雑誌をテーマにした」古本店、マグニフでちらっと見ていたらなんと1986年3月発行の「BRUTAS」を発見。しかもグルメ特集!

1986年3月号の『BRUTUS』 グルメ特集

1986年のグルメ特集!当時はバブルど真ん中。一体どんなバブリーな当時の情報が載っているのか?

しかも「玉村豊男が選び 大宮勝雄が作る 一皿の西洋料理」ですよ。玉村豊男さんは1945年生まれのレジェンドフードエッセイスト。日本の西洋料理界のドンのような「レストラン大宮」のオーナーシェフと組んで、40年前にどんな料理を作ったのか?

しかし、こうした古書の雑誌はビニールがかかっていて中が読めない。フードライターとしてこれは買うしかない!とゲットし、家に帰ってワクワクしながら開封したのです……そして衝撃っ!

読みにくさがスゴい(笑)

文字、小さっ!行間せまっ!

開いてみて、まず料理以前にこの字組みに衝撃!

今の雑誌はどれも大体18〜19字×30行×1段か2段など、「原稿用紙よりちょっと長め」くらいを1ページに組むのが基本ですが、40年前はその3-4倍の文字量を1ページに詰めていたんだなと。ぎっちぎっち!(笑)

『BRUTAS』は20−30代が読者。でも40歳以降の老眼が始まる年代の、とがった感性の当時のイケオジも結構読んでいたはず。彼ら、この細かい文字、最後まで毎号読めたのか?

原稿料も高かったろうけど、この文字量を毎回納品するライターさん、大変だったろうなー。編集者も誤植チェックするの大変だったろうなー。

料理写真ちょっと地味?ワイン安すぎ!

それと、当時のカメラの性能ではこれが限界だったのでしょう、とにかく写真が地味、また料理自体もお皿から飛び出してみえるような迫力やキラキラ感がない……。雑誌の料理写真は、誌面に手を伸ばせば食べられちゃいそうな、迫力ある写真を選ぶのが基本なのです。

普通の人が自分のスマホで、毎日のごはん写真を気軽にキラキラに撮る、令和のインスタ文化を見たら当時の編集部仰天するだろうなー(笑)

カリフォルニアの高級銘柄が1000円〜?!

ワインの値段にもびっくりでした。第2特集がカリフォルニアワインで、ナパとソノマにも取材に行ってました。

そういう海外取材は2000年代に入ってからやっていたし、私もフードライターで何度か行ったことがあります。が、掲載されたワインの値段にびっくり!

著作権がありそのままページを載せられないですが、少しわかりますかね……今だったらワイン売り場でカギ付きの高級棚に並ぶ数万〜数10万のカリフォルニアワインが1,000円とか2,500円、5,000円で表示されている!

今なら完全アウト表現もザラ

今なら完全アウト

さすが公共バスで喫煙OKだった時代

あと人種や喫煙の話の扱い方が、今なら完全アウトな内容や表現も結構あってそれも驚きでした。

女性がタオルを付けずに入浴する写真がドーン、と載っていたり。

この時代があるから今があり、私はここから続く未来で今、仕事をしている

当時の時代のアイコン、松田優作さん
と、当時のちょっと雑で自由すぎる空気感や、食メディアも今ほど洗練されていなかったことに驚きを受けたのですが、景気がよくてこれから日本はどんどん伸びていく感じで、楽しかったでしょうねー。
当時と比べると今は景気が悪くてなんか先行き見えない世の中だし、自由さは減っているけど、本当に信じられないくらい食の情報が磨かれ、メディア業界周りの一部の人だけに許されていた発信が、誰でもどんな形でもできるようになった。そしてそういう草の根のコンテンツが面白いと注目される時代になった。
どっちがいいか悪いかと単純には分けられないけれど、私はこういう過去から築かれてた出版業界で仕事をさせてもらっていて、とてもありがたいなーとしみじみ思ったのでした。

それでは、今日も最高においしい1日を!

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