フードライター浅野陽子の美食の便利帖

フードライター、食限定の取材歴20年。生パスタの専門家。執筆実績『dancyu』『おとなの週末』『日経MJ』『AERA』『NIKKEI STYLE』『TimeOutTOKYO』/書籍『おいしい無印良品』/TV出演『バイキング』『TVチャンピオン』ほか/東京都出身、青山学院大学国際政治経済学部卒、ダイヤモンド社を経て独立。ご連絡は asano.yoko[あっと]gmail.comへ

[ドラマ評]『イカゲーム』にハマる理由を「食べる」シーンからフードライターが分析してみた

ソウルのOlympic parkの画像

Photo : unsplash.com

こんにちは、フードライターの浅野陽子です。

今、世界中で話題になっているNetflix(ネットフリックス)のドラマ『イカゲーム』、もうご覧になりましたか?

Netflix史上最大の視聴者数を最速で出した、という韓国発のサスペンスドラマです。

配信開始から一カ月で1億4200万世帯もが視聴(日本の人口を軽く超えちゃった!)、
世界94カ国で1位にランクイン、と数字上でもかっ飛んでいるようですが(データはこちらを参照)、とにかく見ていて面白くて、どハマりしてしまいました。

今回はこの「イカゲーム」について、私なりの分析を書きます。

※ネタバレはしていませんが、最後の方の回にも軽くふれています。
「見る前に内容を一切知りたくない」という方は、これ以上読むのをお控えください。

韓国ドラマは苦手だったのに『イカゲーム』だけハマる

10年以上前、「冬ソナ(冬のソナタ)」から日本での韓流ドラマブームが始まりました。

2004年にめちゃくちゃ話題になって、テレビでやたら「新大久保グルメ」が取り上げられて、2005年3月のFOODEX(アジア最大の食の展示会)で、韓国パビリオンがこの年から急にド派手な演出になり、盛り上がっていたのを覚えています。

ただ韓国ドラマは、私はどうも苦手でした(韓流好きの方、すみません!)。
今は亡き母が大好きで、『冬ソナ』をはじめ『チャングムの誓い』も強制的(?)に見せられました。

ごく最近でも、大ヒットしている『愛の不時着』や『梨泰院(イテウォン)クラス』もがんばって見てみたのですが、どうも入り込めず……全部1、2回目で脱落。

しかし!

「今回も好きになれないだろうけど、みんな『イカゲーム』やたら話題にしてるから、一応見とかないとなー」と軽く見始めたら……まんまと、ハマりました(笑)。

一応あらすじを紹介

今さらですが、一応あらすじをざざっと紹介。
Netflixの公式予告編動画もつけておきます(嘘っぽいのでそんなに怖くないですが、一瞬流血シーンも出てくるので注意)。

この大泉洋さんそっくりの主人公(ソン・ギフン)をはじめ、金遣いが荒く借金や人生いろいろを抱える人たちが、ばく大な賞金目当てに壮絶な生き残りゲームを戦う、というストーリーです。

生き残りゲーム自体はすごく単純で、「だるまさんころんだ」「つな引き」など子どもの頃からやってきたものばかり。

そのわかりやすさも魅力なのですが、この作品のすごさは、とにかく毎回の「展開力」ですね。
アメリカのドラマも展開力がありますが、イカゲームは半端ない。

見始めてすぐ、
「あー、ドラマでよくある不幸な主人公の設定ね」
「そんなこと起きるわけない」
「嘘っぽい設定だなー」
「舞台の背景もちゃっちくない?」
と、激しくツッコミを入れてしまうのですが、毎回いい場面でばちん、といきなり終了するので見ている方は、ぼう然。

「え?!で?」「結局、どうなるの?」と思っていると、Netflixなので数秒間ですぐ次の回が始まります。

うーん、気になるから次の回だけとりあえず……と見始めては繰り返し、まんまとやめられなくなるわけです(笑)
食事や睡眠もそっちのけで見続けてしまう(この状態を「ネトフリ廃人」と呼ぶそうです)。

ものすごく時間があるのに外出ができず、人と会えないとき(まさに緊急事態宣言中)は最高ですが、忙しかったり、ほかにやらなきゃいけないことがあったりするときは、絶対見てはいけません……。

フードライターが「食べるシーン」から見た『イカゲーム』の面白さ

と、ここまではいろんな人が書いていることですが、以下、フードライターとして「食べる」シーンから見た『イカゲーム』の面白さを私なりに分析しました。

最後の方の回で、勝ち残ったファイナリストたちへの「ごほうびディナー」のフレンチのフルコースが出てくる場面がありますが、『イカゲーム』全体で、食べるシーンはあまり盛り上がりません。

ゲームの参加者は、全員同じの寮?のようなところで寝泊まりし、食事は配給制です。「今から食事を出すので列に並んでください」とアナウンスがあって、食べ物が配られますが、「サイダー1本と卵1個」「(ゆでた?)とうもろこし1本」など、毎回超質素。

「こんな量じゃ、あんなハードな戦いできるわけないじゃん!」
「甘いサイダーって……昭和?大人が今それ飲むの?」

と、また「見ながら一人ツッコミ」してしまうのですが……

そうか、この食事のありえなさが、かえって作品全体の不気味さやサイバーリアル感を強烈に高めているのだ、と後から気づきました。

「こんなこと、現実に起きるわけないだろう」とツッコミどころ満載なのに、設定にフィクション性や未来感が高すぎて逆にのめり込み、みんな行く末に引きつけられてしまう。

そういう中毒性の演出に一役買っているのが、イカゲームでの「食べるシーン」なのです。

日本人が『イカゲーム』を作ったら「弁当」配給?

さらに食べ物がグローバル仕様で、韓国発のドラマでも、キムチやトッポギなどを入れないのもいい。

もし日本人のクリエイターがこの作品を作ったら、どんな食べ物を出すのだろう、とふと考えました。

日本人俳優が演じるなら、甘いサイダーやとうもろこし1本は、ちょっと違和感が強すぎます。

「おにぎりとウーロン茶」や、ロケ弁のような弁当が出てきそうですが……

それだと変に現実感が出て引き戻され、この物語の嘘っぽさに興ざめしてしまうでしょう。

世界中の誰もが見てもわかりやすい、しかも物語に合う不思議で質素な食べ物で「出演者の究極の状況」を共感できるようになっている。

「『イカゲーム』は食事シーンにも、世界観や面白さが細かく設計されているんだなー」とフードライターとして感じました。

 

ということで、『イカゲーム』、
まだの方はぜひ見てみてください(くれぐれも時間があるときに!)

www.netflix.com

 

<こちらもどうぞ(過去記事)>

asanoyoko.com

asanoyoko.com