フードライター浅野陽子の美食手帖

“食べることがもっと楽しくなる”をお届けします(火木土に更新)。 食の取材歴25年のフードライター浅野陽子がレシピから名店レストラン、旅グルメや取材の裏話までつづるブログ。 著書『フードライターになろう!』発売中

【読書評】 「書くフリーランス」は一度は読むべき、悩んだとき私を救ってくれた『魂の退社』

食限定の取材歴25年、フードライターの浅野陽子です。

今日は土曜なので本の話を書きます。今から2年前、仕事であまりにも悩んでいたときにたまたま読んで本当に救われた一冊『魂の退社―会社を辞めるということ。』(稲垣えみ子著)について。

これは最近急増している、「書く仕事」に就く全フリーランスが読むべき本です!

ちょうど本を出した時の稲垣さんの年齢が自分と同じで共感

「アフロ記者」としてエッセイなどを各所で執筆し(こちらのAERA連載など)、テレビにもときどき出演されている稲垣えみ子さん。

1965年生まれの稲垣さんは私の9歳上で、50歳で朝日新聞社を退職されたのは約10年前。

この本が出たのも今から10年前なのですが、たまたま、稲垣さんが登壇される「働き方セミナー」みたいなのの告知で、私が50歳のとき、この本のニュースが自分のスマホに上がってきたのでした。

そこで一部だけ読めて、読み始めたら引き込まれて。

「これは読まないといかん!」と感じてすぐ本丸ごと購入しました。

頑張っているのにいろいろ報われなすぎる

今、フリーランスの編集者やライター、デザイナー(本や雑誌、ポスターなどのデザインをする人)などに仕事を依頼する側が「予算がない」と泣きつき。

出版まわりのクリエイターを究極に安く使う「フリーランスの買い叩き」問題に怒り、声を上げる人が急増しています。

私が今の仕事を始めた20年以上前は、有名な新聞や自分が好きな食の雑誌に、名前入りで記事が書けるのが嬉しくて。親も「コンビニで売っている雑誌にあなたの名前が出ていたよ!」喜んでくれるし、「書かせてもらえる」ってスタンスで夢中で仕事していましたね。

自分の働き方に、出版社やメディア側に不満を言うライターなんて、メディア側にとっては一番めんどくさい。そんな声を上げようものなら即、次の仕事をもらえなくなる。なのでいろいろ飲み込んで仕事をしていました。

でも2年前、「これはおかしい!」と思うことが私の周辺でいろいろ、立て続けに起きて。どうにもやるせなくなっていたときにスマホに上がってきたのが『魂の退社』だったのです。

やっぱり元朝日新聞社。稲垣さんの書く文章は本当に読みやすい

『魂の退社』は稲垣さんがいろいろ悩んだ末に朝日新聞社を退社し、またフリーランスで働き出す話なのですが、フリーになって直面したそういう違和感もきちんと書かれています。

実力がない人がウダウダ言っても「あっそ」と流されるだけ。でもさすが元・朝日新聞の編集委員。稲垣さんは本当に文章が上手で読みやすく、また思考も整理されていてめちゃくちゃ頭に、心に入ってきました。少しずつ、著書をほぼ全部入手しました(『人生はどこでもドア リヨンの14日間』は当時Kindle Unliitedに入っていたのでそこから)。

稲垣さんこそ真のジャーナリスト

食の執筆者って、すぐ「◯◯ジャーナリスト」って肩書きを名乗る人多いんですよ。◯◯は料理ジャンルとか、お菓子の素材とかね。具体例を出すと、該当する方がリアルに出てきちゃうのでやめますが。

でもそれに対し、私は前からずっと違和感があった。

昭和生まれの私が思う「ジャーナリスト」は、身の危険をさらしてもオウム真理教に意見を言い続けた江川紹子さんや、国際情勢を細かく分析し日本のこの政策がおかしいと大手新聞や雑誌のコラムで書き、具体的に声を上げている櫻井よしこさん、日航機事件やジャニーズ問題を指摘した故・森永卓郎さんなど。つまり「命をかけて自分の違和感や意見を世に問う人」。

稲垣さんは退社し、フリーになってから「フリーの物書きのこの待遇はおかしい」と、こうした著書を通じてちゃんと声を上げている。真のジャーナリストだなと思いました。

そして『魂の退社』読後以降、私も初めて自分の意見をSNSで発信しています。前はライターがメディアやSNSで自分の意見を言う、思いを語るなんて考えられなかった。でもそうやってから、少しずつフォロワーも増えています。これからも続けます。

すべての「書くフリーランス」に読んでいただきたい一冊です。

それでは、今日も最高においしい1日を!

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