フードライター浅野陽子の美食手帖

“食べることがもっと楽しくなる”をお届けします(火木土に更新)。 食の取材歴25年のフードライター浅野陽子がレシピから名店レストラン、旅グルメや取材の裏話までつづるブログ。 著書『フードライターになろう!』発売中

【読書評】 ガチガチの出版業界人間だった自分がブログを書けるようになった理由|伊藤まさこさんの著書

食限定の取材歴25年、フードライターの浅野陽子です。

今日は土曜日なので本の話を書きます。

「食と暮らし」に関する独自のセンスとエッセイが大人気。著書も数十冊あり、Instagramのフォロワー数22.7万人!のスタイリスト、伊藤まさこさん(@masakoito29)の著書です。料理好きならご存知の人も多いでしょうか?

出版業界出身の私、どうしても「個人発信=軽い」と思いこんでいた

私は2005年からこのブログを書いているので、もう20年以上になります。

普通に読んでくださっている方は、「ちゃんと“記事”じゃん、コンテンツじゃん」と思っていただいているかもですが、新卒から出版社に入り、ずっと出版業界にいる私には「ブログ=日記、個人のお遊び」と軽く思いがちでした。

私だけじゃなく、周りのライターも編集者もみんなそう。

なのでブログもずっとそういうスタンスで書いてきて。行ったレストランやレシピ情報、自分が書いた雑誌の記事などの話は載せるけど、単なる自分の軽い日記程度だったのです。

食についてのふわっとした発信が、優しいけど“薄くない”

でも2年前、取引先にいろいろ思うところがあって(詳しくは前に書いたこちらの記事を)。

いろいろ考えて「そうか、私がメディアに“書かせてもらっている”立場だからそうなるんだ、“自分自身=メディア”になればいいんだ!」とハッとしたのです。

気持ちを切り替え、ブログにめちゃめちゃ本腰を入れようと決意。しかし、ですよ。ずっと半分お遊びとして向き合ってきたので、どう書けばいいかわからない。

ウェブメディア風に書き始めると、個人ブログとしては真面目すぎる・重すぎる。普通の人は気楽に読む気になれない。

かといって、ふわっと書こうとすると一応プロの物書きの自分。今度はその軽さ、内容の薄さに耐えられない(笑)。

パソコンに向かうものの、1文字も進まなくなり。20年以上のライターの仕事で、記事が書けないことなんて一回もない。

一体どうしたものかと悩んでいたときに出会ったのが、伊藤まさこさんの本だったのです。旅先の宿のフリー図書スペースで、たまたま手に取りました。

料理道具や器、すべてに一貫した「好き」と独自の伊藤さんのセンス

伊藤さんの自分のセンスを押し付けない、強制しない柔らかなタッチ。でも店選びや料理道具、器、料理レシピへの向き合い方には一貫した主張や意見がある。海外が好きで美意識が高く、お手頃な値段のお皿や素朴な道具でもなんでも、洗練されている。

好きな道具や器を紹介し、それにまつわるご自分のレシピも載せていて。大きい強い主張はしていないけど、ちゃんとご自身の考えが読んでいて伝わってくる。

そうか、こんなタッチで私もブログを書いたらどうだろう、と思いつきました。

お嬢さんが一人いて、仲良く同じ食べ物を食べたり、買い物を楽しんだりしていることも自分と共通していて。でもベタベタな子育て調ではない。とてお親近感が沸きました。

特に好きな4冊

伊藤まさこの台所道具」は伊藤さんがこだわっているフライパンや鍋、菜ばしなど日常の調理道具の思いと、その道具で作るレシピを1品ずつまとめた本。

伊藤まさこの器えらび」はその食器版、洋食器と和食器。それを盛り付けるレシピや、買いに行くショップの情報もあります。

夕方 5時から お酒とごはん」は呑兵衛の伊藤さん(それも自分と似ている笑)の好きな居酒屋やバーを紹介。家で飲む好きなお酒、おつまみレシピもたくさん。

おやつのない人生なんて」は甘いものも好きな伊藤さんの、国内外のスイーツショップのおすすめを書いたエッセイ。

他にも京都や金沢の歩き方ガイドもたくさん出されています。私はお裁縫が一切ダメなので無理ですが、手作りの子供服の本もあります。

個人の発信でもオッケーな時代、年々さらに進化

そんな感じで、伊藤さんの本について書き始めたら止まらないのですが……。

個人の発信は、私が今まで20年以上やってきた雑誌や本、メディアの公式サイトのようにすべてがみっちり、完成形なコンテンツじゃなくてもいい。

情報の完璧さや量より「一貫した視点」が大事なんだ、と思わせてくれた貴重な出会いだったのでした。

本当にたくさん著書を出されているので、大手書店に必ず何冊かはあります。気になったら、手に取ってみてください。

それでは、今日も最高においしい1日を!

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